アジア最大のジャンル映画のお祭り、第27回富川国際ファンタスティック映画祭(略称BIFAN)が、6月29日から7月9日まで開催された。今年特集上映が組まれたチェ・ミンシクをはじめ、ユ・ジュンサンチョン・ドヨンイ・ソンギュンイ・ハニヤン・ドングンキム・ソンギュン、そして大病を克服したアン・ソンギというベテランから、チャン・ドンユン、onlyoneofら若手まで、多くのスターや作り手、そしてファンが参加して盛り上がりを見せた。

血液がんを克服した名優アン・ソンギが、パク・チュンフン、チェ・ミンシクと共に開幕式のレッドカーペットに登場すると、観客からひときわ大きな拍手が贈られた 画像:富川国際ファンタスティック映画祭公式より

開幕式では、昨年から新設されたシリーズ賞に「D.P. -脱走兵追跡官」が選ばれ、監督らと共に、キム・ソンギュンがキャストを代表して登壇した 画像:富川国際ファンタスティック映画祭公式より

■富川国際ファンタスティック映画祭トークイベント「『キル・ボクスン』の裏側」

 BIFANは例年トークイベントが多く開催されているが、まず注目は、「『キル・ボクスン』の裏側」と題したトークで、主演のチョン・ドヨン、監督のピョン・ソンヒョンが参加。

 チョン・ドヨンがシングルマザーの暗殺者を演じたNetflix映画『キル・ボクスン』は、実は富川市が主要なロケ地の一つ。Art Bunker B39という文化施設(BIFANのイベントも行われている)が、暗殺会社の会議室として度々登場する。この施設は元々は清掃工場だったため、コンクリート剥き出しで天井が高く、重々しい雰囲気が暗殺組織にぴったりだ。

「ぜひ富川でみなさんとお話ししたかったです」と挨拶したチョン・ドヨン。8年前には、BIFANの今年の顔に選ばれ、特集上映も行われている。

画像:富川国際ファンタスティック映画祭公式より

 映画の中のボクスンは眉をきっちり描き、フルメイクだったが、この日のチョン・ドヨンは眉は整えただけのナチュラル・メイクで、とてもリラックスした雰囲気。思春期の娘との関係に悩む暗殺者というユニークな役を引き受けたのは、「ずっと重めの役を依頼されることが続いていたんです。でも、もっと新鮮味がある人物を演じタイト思っていました」と語った。

『名もなき野良犬の輪舞曲』など激しいアクションに定評のあるピョン・ソンヒョン監督は、「チョン・ドヨン先輩のことが大好きだったので、ずっと一緒にやりたかった。でも大先輩であり演技の天才ですから、いつ頼めば良いか悩んでいました」という。当初は別の企画で組む話があったが、それよりもオリジナルで脚本を書きたい、ということで生まれたのが、ボクスンというキャラクターだった。

 チョン・ドヨンは、「『キル・ボクスン』の脚本を読んだ時点では、ここまで壮絶なアクションをしなければならないとは、気づかなかったんです。もう激しいアクションは二度とやりたくない」と笑いつつ、「でも、もし再びボクスンを演じることがあるとしたら、もっと上手に戦える気がします」と、まんざらでもない様子だった。

画像:富川国際ファンタスティック映画祭公式より