そういう意味では、最終回でジソプが法廷の証言台に立つシーンも印象に残っている。
最初に観たときは、実はそれほど気に留めていなかった。だが、本作を視聴後に、韓国の軍隊のことをもっと知りたくなり、韓国軍を扱った映画や本をいろいろ見たり読んだりする中で、証言台でジソプが「大韓民国の軍人ならば、可能性のない話ではないことが分かるはずです」と呼びかける場面が思い出された。軍組織に「不条理」が生まれる原因……。軍隊に馴染みのない自分を含めた日本人は、軍人にとっての「命令」の意味をどこまで理解できるだろうか。
この「不条理」という言葉とともに、本作に横たわっているキーワードは「傍観」だろう。主人公ジュノは、シーズン1の最初のエピソードから「傍観」について考え続けている。シーズン2では寡黙に状況を見守ってきたように見えた彼が、最後に大きな選択をする。
本作は、シーズン1から、最初に流れる兵役義務についてのテロップとオープニングの映像を変えていない。だが、「明日」とタイトルがつけられた最終回は、「すべての国民は人間らしく生きる権利を有する 国は災害を防止し その危険から国民を保護するため努力しなければならない 大韓民国 憲法 第34条」と、テロップが変更されていた。振り返ってこちらを射貫くように見つめるジュノが印象的なオープニングはそのまま。
「傍観」に対する責任の所在を、ハン・ジュニ監督はどうしても描きたかったそうだが、最終回を観ると、その想いを強く感じる。
最終回の締めくくりともいえるシーンで、キム・ソンギュン演じるジュノの上官パク・ボムグが安堵した表情を見せていたのも、とても印象的だった。一方で、シン・スンホ演じる元兵長ファン・ジャンスが、軍でのイジメのことなど忘れたかのように日常を暮らしているシーンも最後に映し出され、こうしたことを内包しながら社会は動いているのかと思うと、複雑な想いがした。
物語はいったんピリオドを打ったように見える。だが、ホヨルは除隊したが、ジュノの軍隊生活は終わっていない。シーズン3を観たいような気もするが、ここで終わるほうが余韻が少し残されていて美しいのかもしれないと思ったりもする。
●配信情報
Netflixシリーズ『D.P.-脱⾛兵追跡官-』シーズン2 独占配信中
[2023年]監督:ハン・ジュニ 脚本:キム・ボトン、ハン・ジュニ 原作:キム・ボトン『D.P. Dog's Day(英題)』