俳優陣の好演も、大きな見どころだ。元金メダリストの長官役には『その恋、断固お断りします』でも存在感を発揮していたキム・ソンリョン。長官として意外な実力を発揮していく姿を淡々と演じているが、元射撃選手ならではの鋭い眼差しが時折光る。本作は、女性政治家が主人公ということも大きなポイントである。男性政治家だったら、劇中の出来事はおそらく起きなかったからだ。

『こうなった以上、青瓦台に行く』(C)Content Wavve Corp.

 若手で注目は、そんな長官の秘書役のイ・ハクジュ。本作により第1回青龍シリーズアワードで助演男優賞を受賞した。『夫婦の世界』でブレイクした彼だが、韓国ではこの役でさらに俳優としての注目度が高まったという。誠実ゆえに考えすぎて空回りしてしまう姿がユーモラスだ。

『こうなった以上、青瓦台に行く』(C)Content Wavve Corp.

 

 個人的にとても好きな俳優であるペク・ヒョンジンも、長官の夫の政治評論家役で本領を発揮している。『良くも、悪くも、だって母親』でうさん臭い作曲家を演じた俳優さんといえば、わかる人もいるかもしれない。

 ペク・ヒョンジンは、もともとパク・チャヌクなどの著名な映画監督にも影響を与えたミュージシャン且つアーティスト。最近は俳優としてドラマでも印象を残していて、クレイジーな役を演じさせたら天下一品! 本作でも他人が不快になるような一面をちらりちらりと見せるクセのある人物を演じ、気持ちをざわざわさせる。

 さらに、このドラマ、OSTもすばらしいセンスで心震わせる。毎回、エンディングに登場人物の気持ちを代弁したような曲が流れるが、特に目を引くのはチョー・ヨンピルの楽曲だ。

 日本では演歌歌手として知られるチョー・ヨンピルだが、米軍基地でバンドマンをしていた経験もあり、ロックテイストの曲を歌うときはかなり印象が違う。ダサかっこよくてものすごくパワフルなのだ。本作で使われている「見つからない鶯」「赤とんぼ」という2曲もそんな楽曲のひとつで、レトロな感じがドラマにぴったりである。

 ああだこうだ考えたくなるけど、わからなくても笑えてしまう『こうなった以上、青瓦台に行く』。30分12話というのも、ブラックユーモア酔いしないほどよい長さでいい。ありきたりではもう満足できないという方には、ぜひおすすめだ。こんなジャンルの韓国ドラマもあるのか……と、驚くことうけあいです。

『こうなった以上、青瓦台に行く』(C)Content Wavve Corp.

●作品情報

『こうなった以上、青瓦台に行く』U-NEXT独占配信中

[2021年/全12話]演出:ユン・ソンホ

出演:キム・ソンリョン、ペク・ヒョンジン、ペ・ヘソン、イ・ハクジュ

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