チェ・ドクムン(ミソの大学時代のバンド仲間のボーカル担当)

 保守的な韓国家庭のいびつな部分を、同居している母親役のキム・ロギとともにコメディともホラーともとれるインパクトのある演技でむきだしにした。本作前半のハイライトシーンである。

 チェ・ドクムンはバイプレイヤーと呼ぶのが申しわけないくらい多くの映画に出ている。イ・チャンドンの傑作『ペパーミント・キャンディー』(1999年)でデビュー以来、40作以上に出演。ドラマではソン・ジュンギ主演作『ヴィンチェンツォ』のクリーニング店主役が印象的だった。

キム・ジェファ(ミソの大学時代のバンド仲間のボーカル担当)

 富豪と結婚して邸宅に住んでいるが、富と心の安定の両立の難しさを上手く演じている。目力が印象的な彼女を初めて認識したのは、ハ・ジウォンペ・ドゥナ主演の卓球スポ根映画『ハナ 奇跡の45日間』(2012年)の中国人選手役だった。汎アジア的な目鼻立ちから、最初は中国の女優かと思ってしまった。最近では、『モガディシュ 脱出までの14日間』(2021年)、『キングメーカー 大統領を作った男』(2022年)、『キル・ボクスン』など、ヒット作への出演も多い。

パク・ジヨン(ミソの部屋探しに同行した不動産会社社長)

 当然と言うべきか、貧しいミソが部屋探しをするのは山の斜面にあるインフラが整備されていないタルトンネである。そのとき、家賃が激安だったり、敷金不要だったりする劣悪物件を紹介する不動産屋の社長を演じたのが、パク・ジヨンだ。

 1990年からドラマで活躍し、映画デビューは『優雅な世界』(2007年)の主演ソン・ガンホの妻役。なにより毒婦がハマり役で、最近では、キム・ゴウン主演『シスターズ』三姉妹の母親役や、マ・ドンソクソン・ソック主演映画『犯罪都市THE ROUNDUP』の会長夫人役が印象的だった。2PMジュノ主演の大ヒット時代劇『赤い袖先』では、宮女を統率する提調尚宮役を演じている。

 ところで、『小公女』を観ていて思い出した映画がある。チョン・ドヨン&ハ・ジョンウ主演の『素晴らしい一日』(2008年)だ。こちらは、無職の男(ハ・ジョンウ)が元カノ(チョン・ドヨン)に借りた金を返すために、元カノといっしょに友人知人を訪ね歩いて借金を申し込む話。原作は日本の同名小説(平 安寿子著)だ。

 物語の骨格が『小公女』とよく似ていて、借金を申し込まれる数名の友人知人に扮した俳優陣の演技が見ものである。なかでも、無職の男の大学時代の後輩の夫に扮したキム・ヨンミンと、娘と二人暮らしのスーパー店員に扮したチャン・ソヨンの演技には注目だ。