――ユ・ジテさんは怪物と呼ばれるチョ・ホンの役作りのため、撮影前からトレーニングの様子をSNSやYouTubeで公開されていましたね。
ユ・ジテ すべての俳優がそうであるように、役を引き受けることになれば、一応見た目からキャラクター化させるのが望ましいと思います。それで、原作のチョ・ホンは身長が2メートルくらいあって、壁のように大きな身体を持たないといけなかったので、とりあえず20kgくらい体重を増やしました。以前にも作品のため同程度の増量をしたことはありましたが、筋力をつけてから筋肉量を増やす作業はまた新しい経験でした。とにかく見た目が重要なので、ボディビルダー方式で体を大きくしていきました。同時に、作中の台詞にもこだわりつつ、台本に集中しながらキャラクター分析をしました。
――チェ・ジョンヨル監督が最初のミーティングのとき、すでにチョ・ホンの姿になっていたユ・ジテさんの変身ぶりに全員が驚いたとおっしゃっていました。
イ・ジュニョク 私は以前ジテさんと『スターの恋人』というドラマで共演して、今回久しぶりにお会いしたんです。あの時はとてもジェントルな感じの大学教授役だったのに、本物のチョ・ホンが現れたかのように本当に大きくなられていて……私もその頃、映画『犯罪都市 NO WAY OUT』のために体を鍛えて体重もかなり増やしていたつもりでしたが、そんな自分には「限界があるんだ」と恥じ入るくらいとても驚きました。
――ユ・ジテさんは実際に演じてみて、原作を読んだときの印象と比べていかがでしたか?
ユ・ジテ 『ヴィジランテ』のなかで、最も漫画的なキャラクターを選ぶとしたら、私が演じたチョ・ホンだと思います。ダークヒーローものによく登場する典型的な捜査チーム長的な面もありますが、もう少し人間的でリアルに表現するよう務めました。また、怪力の持ち主で、コインを指で折り曲げたり、車を持ちあげたりするのは原作にも出てくるシーンです。人もまるでコインみたいに叩き潰すような、そういった演技もしているんですが(笑)、どうすればリアルに表現できるのか、かなり気を遣いながら演じました。半面、リアルな表現が必要ですが、ご覧になる方々に“漫画的な想像力”を、説得力を持たせて伝えることも必要な作品だと思いました。ですので、漫画的な部分と、写実的な演技の間を取るように演じていました。
――キム・ソジンさんは真っ赤な髪に加え、上司にも歯に衣着せぬ物言いのチェ・ミリョが冒頭から衝撃的でした。3人のなかで最も大胆変身されていると思います。
キム・ソジン ミリョは、私たちが考える典型的な記者の姿ではないですよね。赤い髪でとても派手な服を着たりもするし。そういう典型から抜け出して、既存の枠や境界を果敢に越えていく、動物的な本能で動く記者の姿に近かったんじゃないかと思うんです。自分の意見を堂々と突き通すような人物で、どんな状況でも、めげずに大胆に、といった芯の強さが、私には非常に魅力的に映りました。私がこれまでやったことがない部分を外見的にも感情的にも思いっきりチャレンジしてできる役だと思ったので非常に楽しくやらせていただきました。
――周りの取材スタッフを鼓舞するときに「OK!?」と念押ししたりと、ハキハキとした台詞回しや発音は、さすが舞台出身だと思いました。ミリョの強い女性像が良く出ていましたね。
キム・ソジン 発音はさほど気にしませんでしたが、常に自信を持って表現しようと努力しました。監督さんは、原作のミリョとは少し違う新しい視点を持っていらしたんです。新社会人のような感じよりは、もう少し成熟していて失敗も経験したことのある、海千山千を経た人物として描いてみてはどうかと言われました。それで、原作で見られるミリョのイメージも維持しながら、監督の視点も調和できるよう演じました。私自身は、もう少し人間的で、現実的に共感できるようなキャラクターとして表現できたかな? と思っていますが、どうでしょうか?(笑)。