――演じるにあたって難しかった点・苦労した点は?

 チホは極度にコミュニケーション能力に欠ける男です。だからこそ、イルヨンがチホを“なぜ”好きなのかという疑問を感じさせてはいけないと思いました。社会性はないけども、イルヨンが十分愛するに値するキャラクターにしないといけない。そのバランスを考えました。イルヨンが一目惚れするような、チホの純粋な魅力をどう表現するか、ずっと考えていました。

――監督から何か注文はありましたか?

 作品の準備をしながら、演出するイ・ハン監督の実際の姿をいろいろ参考にしました。監督は本当に純粋で、まるでチホのような方なんです。だから、この映画が人間味の感じられる映画になったんだと思います。

――キム・ヒソンさんとの初共演は、いかがでしたか。

 愛の物語なので、相手方の俳優との相性がとっても重要な作品でした。キム・ヒソンさんの性格の良さはよく聞いていましたが、現場で会ってみると、びっくりするぐらい、相手を居心地よくしてくれます。スタッフたちも、ミーアキャットみたいにいつもキム・ヒソンさんを待っていました(笑)。キム・ヒソンさんの明るいエネルギーのおかげで、私もいい影響をたくさん受けた気がします。

――キム・ヒソンさんとのシーンでもっとも印象的だったシーンは?

 イルヨンとチホが別れる場面ですね。イルヨンが別れようと言って人波の中に入っていくシーンなんですが、撮影中、大泣きしてしまいました。モニターを見ながら、私も監督もヒソンさんも涙を流したのを覚えています。シナリオには「人波の中に消えていくイルヨンを見る」と書かれていたのですが、私がチホになって考えてみると、その感情はただ眺めているのでは収まらず、座り込みました。純粋な愛を感じた場面でした。

――その他に印象に残っているシーンを教えてください。

 ドライブインシアターでの撮影場面は、NGが何度も出たんですが、笑いながら楽しく撮影した記憶があります。肌の露出は避けたいほうなのですが、この場面では私がちょっと積極的にアイデアを出しました。チホのような純粋な人が慌てふためく姿を見せるとおもしろいだろうと思ったんです。ズボンが脱げて慌てるチホの姿がうまく撮れたと思います(笑)。

――本作ならではの魅力は何だと思われますか?

『マイ・スイート・ハニー』は刺激的でない、本当に純粋な愛の物語を描いた映画です。日本の観客の皆さんも見て共感できる、温かく純粋な物語という点が、この作品の最大の魅力だと思います。

●ユ・ヘジン Profile

 1970年1月4日生まれ。1980年代より舞台俳優としてキャリアをスタート。1997年映画『ブラックジャック』で映像デビュー。2005年の『王の男』で、大鐘賞の助演男優賞を獲得後は、映画祭の常連俳優に。ユーモアを感じさせるキャラクターで人気を獲得する。主な出演作として『ベテラン』(2014年)、『コンフィデンシャル/共助』(2016年)『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年)、『マルモイ ことばあつめ』(2019年)、『コンフィデンシャル:国際共助捜査』(2022年)、『梟ーフクロウ―』(2023年)など。また、盟友チャ・スンウォンと共演した『三食ごはん』シリーズなど、バラエティ番組でも活躍する。

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