■『酔いしれるロマンス』
癒しのラブコメディに良作が多かった2024年。酒類業界を舞台に感情を隠して生きるヒロインと感情を読み取れる主人公の恋を描く『酔いしれるロマンス』も、そんな一作といえる。ありのままに生きることの幸せを摸索していく姿に共感する人も多いだろう。
このドラマは、オーソドックスに見えてヒロインと主人公の設定がユニークだ。酒類会社で働くヒロインのヨンジュは、いつも軍靴を履いていて、軍隊の特殊部隊出身という設定。『社内お見合い』のキム・セジョンが、強靭な肉体をもつ女性を溌剌と演じている。
一方、そんな彼女と恋愛関係に発展するミンジュは、天才的なビール職人だが、人の感情に敏感な“エンパス”であるという設定だ。おそらく韓ドラとしては初の設定で、個人的にも初めて聞いたが、“HPS（Highly Sensitive Person）”などの繊細さんが注目される昨今においては、トレンドに合ったキャラのように思う。
そんなヒロインと主人公を演じる主演2人が役柄にぴったりで、相性がとてもよいのも大きな見どころだが、なかでも注目したいのはミンジュを演じたイ・ジョンウォン。日本ではまだ放送・配信されていないのが残念だが、『夜に咲く花』で人気を集めた新鋭だ。
2024年は『ソンジェ背負って走れ』で主演のビョン・ウソクがニュースターとなったが、このイ・ジョンウォンも今年見逃してはいけない俳優である。正直、1話目を観たときにはヒロインの相手役として物足りない気もした。だが、観進めるうちに印象がどんどん変わっていった。涼し気な目元と柔らかい物腰。じわじわくるタイプなのである。
また、個人的に、旅行好きということもあってか、オフィスドラマや宮廷劇の閉塞感に息が詰まることがあるのだが、本作はオフィスドラマでありながら地方シーンが多いのも清々しくていい。ビールの原材料であるホップの緑あふれる畑、そこでのびのびと働くユニークな人々などに心癒される。ビールの製造過程や酒類業界のあれこれが見られるのも、お酒好きの人には興味深いかもしれない。
昨今の癒しのラブコメディには、本当の悪人や悲劇はほとんど登場しない。本作も最後まで安心してゆったりとした気持ちで楽しめる。心を穏やかにする優しいセリフもたっぷり。休日をのんびり過ごしたいときにおすすめの一作だ。
●配信情報
『酔いしれるロマンス』U-NEXTにて独占配信中
［2024年／全12話］演出：パク・ソンホ『社内お見合い』『油っこいロマンス』』『あやしいパートナー～Destiny Lovers～』脚本：イ・ジョンシン
出演：キム・セジョン『社内お見合い』『今日のウェブトゥーン』『悪霊狩猟団：カウンターズ』シリーズ、イ・ジョンウォン『夜に咲く花』『悪い記憶の消しゴム〜My Memories〜』『ゴールデンスプーン』『私たち、家族です〜My Unfamiliar Family〜』、シン・ドヒョン『ある日、私の家の玄関に滅亡が入ってきた』『恋の始まりは出馬から!? 〜すべき就職はしないで出師表〜』、ペク・ソンチョル『調査官ク・ギョンイ』『愛していると言ってくれ』『魔女食堂にいらっしゃい』
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