恋人のように甘い声で歌ってくれるということから“鼓膜彼氏“の異名をもつシンガーソングライターPaul Kim(ポール・キム)。『涙の女王』『ホテルデルーナ〜月明かりの恋人〜』『わたしの完璧な秘書』、そして最近公開したNetflixドラマ『ウンジュンとサンヨン』などのOSTナンバーが日本でもよく知られるバラードの名手が、念願の日本デビュー曲『君に会い(Me After You)』をリリース、本格的な日本活動をスタートした。留学時代に培った語学力を駆使して挑んだ日本語歌詞のこと、音楽との出会い、今後の夢について、話を訊いた。(全2回の前編)
■韓国語歌詞をただ訳すのではなく、歌の世界、メロディーの1音1音とマッチする日本語にこだわって作り上げた『君に会い(Me After You)』
――日本デビューおめでとうございます。初披露した日本デビューシングル『君に会い(Me After You)』ですが、メロディーの1音1音に丁寧に乗せた日本語の歌詞が印象的でした。どんなふうに訳詞をつけていったのでしょうか?全部ご自身で手掛けたのですか?
「文法的なチェックは、友達にもしてもらったんですけど、すべて自分で訳しました。例えば、最初の歌詞ですが、韓国バージョンの歌詞をそのまま訳すなら、“眩しい朝の光が”が正しいんです。でも、“ 眩しい”朝の光より“優しい”朝の光のほうが、意味的にもっといいんじゃないかって思って“優しい”を選びました。
また、季節の変化を歌詞に入れたいと思っていたので、たとえば夏であれば、雨や傘をよく使いますよね。そこで、『濡れたままの傘』というフレーズを使ってみたり、秋なら、花火のように木の色が変わる様子を入れてみたりと、季節の流れを感じる言葉を丁寧に選んでいきました」
――『君に会い』というタイトルもとてもすてきですね。
「本来の日本語であれば、きっと『君に会って』『君に会うために』とかですよね。 そのなかでも『君に会って』となると、ちょっと強い日本語に聞こえます。『会い』のほうが、柔らかく優しい感じに聞こえたんです。そんなふうに、音の響きを考えていきました。それで最終的に『君に会い』を選びました」
――韓国バージョンに比べて、『君に会い』のほうがより明るい曲の印象を受けました。
「そうですね。最初のバージョンをレコーディングしたのは2018年ぐらいなんですけれど、その頃の僕の声と、今の声が少し違うんですよ。当時は、もっと暗い感じというか、切なさを強調するような歌い方が好きだったので、そういうふうに歌っていました。今回は、明るい気持ちも悲しい気持ちも、どちらの感情をちゃんと入れたほうが、曲を聞きやすいのではないかと考えてやってみました。
あと、レコーディングするにあったって、マイクも新しいものをテストしてみたり、今回の歌にぴったりのものを探して、レコーディングしました。そんなところも変化に感じたのではないでしょうか」
――レコーディングを実際にしてみて、大変だったのっていうところはどんなところですか?
「レコーディングは韓国だったので、 自分の発音がちゃんと合っているかどうかが、よくわからなくて、録音したものをその都度友人に送って確認したところですかね」