年末が近づき、2025年の韓国ドラマを総括する機会も多くなった。2025年の両横綱は『おつかれさま』と『暴君のシェフ』が有力だが、今年はたくさんの人の目には止まらないけれど、じんわりと心を捉える佳作も多くあった。そんななかから、年末年始にぜひ観たい隠れた名作3本をご紹介!(記事全3回の1回目/以下、一部ネタバレを含みます)
■年末年始にぜひ観たい「隠れた名作」3選!ヨム・ジョンア&パク・ヘジュン主演『初、恋のために』
2025年の代表作『おつかれさま』も母娘の物語を中心に描いていたが、今年は女性2人が主人公の作品が多かった。『ウンジュンとサンヨン』『100番の思い出』『あなたが殺した』など、いずれも見応えのある作品だった。
なかでも個人的に心に残ったのが、『初、恋のために』だ。主演は、『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』のヨム・ジョンアと『おつかれさま』のパク・ヘジュン。中年の男女が初恋相手に出会って……という大人のラブストーリーなのかと思って観始めると、タイトルからは想像できない物語が展開される。
主人公となるのは、中年の男女ではなく、血の繋がらない母娘。パク・ヘジュン演じる初恋の人との再会や、中年の恋についてももちろん描かれるのだが、それは二の次なのだ。初恋はメインテーマではなく、幸せの形のひとつとして扱われているように見える。
タイトルは韓国版タイトルの直訳だが、韓国語の“サラン”は“愛”の意味もあるため、『初、愛のために』とも読み取れる。実はもっと深い想いが込められたタイトルなのかもしれない。
ヨム・ジョンアが演じる主人公イ・ジアンは、建設現場の所長を務めるシングルマザー。身を粉にして働いて育てた一人娘イ・ヒョリ(チェ・ユンジ)は、名門大の医大生という設定だ。2人は血が繋がっていないということが後にわかるが、ケンカばかりしながらも固い絆で結ばれている。
だが、ある日、娘が医大を辞めて突然家出をし、田舎町に暮らすようになるところから物語は急展開。思いがけず娘が重篤な病にかかっていることがわかり、母と娘はこれまでの自分たちの生き方を見つめ直すようになる。
やがて、その田舎町でほかの女性2人を巻き込み、廃屋を改修したレストランを営みながら暮らすようになる2人。自分の幸せなど顧みず必死に生きてきた親子が、不思議な縁で結ばれた人々とともに自分自身を見つけ出していく姿が描かれていく。
こう書くと骨太なヒューマンドラマのように感じるかもしれないが、物語の展開や設定はどこか風変わりで、笑いもたっぷり。主人公はもちろん町の人々のキャラクターも個性的だ。それぞれにつらい過去をもっていることも次第にわかってくるのだが、そんな人々が助け合い影響し合って心地いいコミュニティを形成していく。その中で、母と娘は、悲しみやつらさを抱えつつも、今この瞬間の喜びと幸せを味わうことが大切であると気づいていくのだ。
劇中に「赤の他人だった私たちが苦労して結んだ縁だからこそ大切にする」「あなたが大好きだから、一緒に好き同士で暮らしましょう」というセリフがある。韓国ドラマを観ていて、劇中の人間関係に憧れることがあるが、このドラマもまさにそうした一作だった。