イ・ビョンホン、ソン・イェジンをはじめ、豪華俳優陣の共演で話題の映画『どうしようもない(原題、英題/NO OTHER CHOICE)』は、韓国で9月下旬の公開以降、 観客動員数がまもなく300万人に達する勢いだ。第46回「青龍映画賞」では最優秀作品賞、監督賞、主演女優賞(ソン・イェジン)、助演男優賞(イ・ソンミン)、音楽賞、技術賞の6冠に輝いた。ソン・イェジンはヒョンビン、少女時代ユナ、GOT7パク・ジニョンとともにとともにチョンジョンウォン人気スター賞も受賞している。
本作は、長年製紙会社に勤務していた男が、突然解雇され、別の製紙会社に再就職するために、同じポストを狙うライバルたちを次々と「排除」していく姿を描くブラックコメディスリラーだ。10月に釜山の映画館で観賞したが、目をそむけたくなるような残酷な行為を、悪びれることなく実行する主人公の姿は、哀しくもたくましく、まさにブラックユーモアの世界観を醸し出している。(以下、一部ネタバレを含みます)
■映画『どうしようもない』見どころは?イ・ビョンホン、ソン・イェジンら豪華共演、パク・チャヌク監督作品
ユ・マンス(イ・ビョンホン)は、大手製紙会社の太陽製紙で勤続25年を迎えるベテラン技術者だ。幼少の頃住んでいた住宅を手に入れ、妻のイ・ミリ(ソン・イェジン)と1男1女、そして2匹の愛犬と幸せに暮らしている。
ところが、太陽製紙が外資系企業に買収されたことにより、マンスは突然解雇されてしまう。妻には3か月以内に再就職すると誓ったもののうまくいかず、スーパーでアルバイトをしながら、家財を売り払ったり、ペットを妻の実家に預かってもらったりする。歯が痛くても、病院に行くことすらできない状況だ。そして、苦労して手に入れた自宅すらも手放すはめに。
履歴書を送った別の製紙会社の面接では、緊張とプライドの高さが邪魔をして、本来の自分を発揮できず。面接官であるチェ・ソンチュル班長(パク・ヒスン)にひざまずき、採用を乞うという屈辱を味わう。
突然、マンスの中で何かが狂いだし、自分を阻む者は「排除」すればいいと考えるようになる。そのためにマンスは、偽の求人広告を打ち、ライバルたちの情報を分析、ク・ボンモ(イ・ソンミン)とコ・シジョ(チャ・スンウォン)に近づく。
果たしてマンスは、製紙会社の技術者として再就職できるのか……。
マンスは、家族を守ることと、長年勤めてきたポジションへのこだわりが強く、邪魔になる人間を「排除」すれば自分が就職できるという短絡的な考えにより、時間と労力を惜しまず、連続殺人鬼と化していく。
そんな夫の犯罪を知ることになる妻のミリも、マンスを責めるどころか、マンスの行為を肯定し、まるでマンスの狂気が乗り移ったかのようなふるまいをする。
マンスの犠牲になり失踪者となった者たち、その失踪事件の捜査にあたるベテラン刑事(オ・ダルス)、犯罪に手を染めてしまうマンスの息子、心の病をもつマンスの娘など、シュールなストーリー展開に最後まで目が離せない。
メガホンを取ったのは、第46回青龍映画祭で『JSA』『オールド・ボーイ』『別れる決心』に続き4度目の監督賞を受賞したパク・チャヌク監督。授賞式で発表された「原作小説を読んだ20年前からずっと抱いてきた夢が叶った」という監督のメッセージが大変印象的だ。
●作品情報
映画『どうしようもない(原題)』(英題『NO OTHER CHOICE』)
[2025年/韓国/139分]監督:パク・チャヌク
日本公開: 2026年3月予定
出演:イ・ビョンホン、ソン・イェジン、パク・ヒスン、イ・ソンミン、ヨム・ヘラン、チャ・スンウォン
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