Netflix配信ドラマ『CASHERO ~ヒーローは現金を持つ~』は超能力の世界を描いているが、扱う材料が極めて異端である。特殊能力の発動条件が貨幣、アルコール、食べ物というように世俗的なものと強く結びついているのだ。この設定が、人間の生々しい欲望と弱さという両面を同時に浮き彫りにしていく。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『CASHERO』2PMジュノ演じる人間味あふれる主人公、対する残虐な悪魔役は若手イ・チェミン

 ジュノ(2PM)が演じる主人公カン・サンウンは、マイホームを夢見る平凡な公務員だった。しかし、父から奇妙な力を継承してしまう。所持金に比例して驚異的な怪力を発揮するという能力だ。

 とはいえ、残酷な代償が伴う。能力を使えば使うほど、手元の現金が消失していくのだ。人命を救う尊い行動が、自らの資産を食いつぶす浪費となってしまう。

 長年の恋人であるキム・ミンスクは、極めて現実的な女性だ。キム・ヘジュンが扮する彼女はマンション購入に向けてひたすら倹約を重ねている。彼女の金銭感覚は鋭く、サンウンの能力を非効率だと切り捨てる。それゆえ、人助けのために散財するサンウンの姿は、彼女にとって耐え難い苦痛となる。

 サンウンは深い自己矛盾に苦しみながらも、善意を貫こうともがく。途中で能力の買い取りを持ちかけられ、激しく動揺する彼の人間臭さも大きな見どころである。

Netflixシリーズ『CASHERO ~ヒーローは現金を持つ~』独占配信中
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 サンウンの孤独な戦いを支えるのは、これまた風変わりな同志たちだ。キム・ビョンチョルが演じる弁護士ピョン・ホインは、酒を飲むと知力と身体能力が極限まで高まる。酩酊の超能力者は、滑稽でありながらも頼もしい。

 キム・ヒャンギが演じるパン・ウンミは、摂取カロリーを念力に変換できる女性だ。「パンミ」の愛称の通り、彼女は土壇場で無邪気にパンをかじり、凄まじいパワーを引き出す。柔らかな空気をまとう彼女だが、その精神は誰よりも強靭である。

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 こうした不器用なヒーローたちを徹底的に追い詰めるのが、巨大な財力を誇る組織「凡人会」だ。彼らは異能者の抹殺を冷酷に推し進める。組織トップの娘であるチョ・アンナ(カン・ハンナ)は氷の美女だ。彼女は超能力への異常な嫌悪を抱き、権力を駆使してサンウンたちを標的にする。冷徹だが、心の底にはまだ微かな人間性が残っている。

 だが、アンナ以上に底知れぬ恐怖を撒き散らす存在がいる。物語の後半で真の牙を剥く末息子チョ・ナダンである。