Netflixで人気を集めている『マンスリー彼氏』。物語の舞台となっているウェブトゥーン業界は、常に新しい刺激を求める読者の欲望に応え続けなければならない。その制作現場は、凄まじいスピードで日々が消費される過酷な前線だ。BLACKPINKのジスが扮する主人公ソ・ミレは厳しい業界に身を投じて必死に毎日を生きている。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『マンスリー彼氏』主人公ミレの葛藤と安らぎ、バーチャルな世界で得たインスピレーションが現実の仕事の質を高めてくれる
ミレの日常は、いつも緊張感に包まれている。同じ社内には、パク・ギョンナム(ソ・イングク)という敏腕PDが存在する。会社側は、あえてこの2人に人気作家を担当させ、業績を競い合わせるという巧妙な人事戦略をとっている。
意図的に作られた対立構造の中で、2人は休むことなく火花を散らしているのだ。組織の論理によって仕向けられたライバル関係は、ミレの心から安らぎを奪い去っていく。
加えて、ミレが担当するヒットメーカーの漫画家ユン・ソン(コン・ミンジョン)の存在がとても重荷となっていた。
ソンは非常にわがままで、担当者に対する要求も際限がない。昼夜を問わず飛んでくる度を越した注文に対応するため、ミレはプライベートな時間をすべて犠牲にしている。どれだけ体力があっても追いつかないほどの業務量によって、彼女の精神は限界に近づいていた。心のゆとりは完全に失われ、焦燥感だけが降り積もっていく。
そんな現実から逃れるため、ミレは密かに1つのデジタルサービスに救いを求めた。それが「マンスリー彼氏」と呼ばれる仮想現実のシミュレーションである。
1カ月単位で課金を行うことにより、自分の思い描く完璧な恋人をバーチャルな空間に創り出すことができる。現実の男性との恋愛など、今の彼女には時間的にも精神的にも難しい。だからこそ、ただ自分だけを優しく肯定してくれる実体のないイケメンが唯一の命綱となったのだ。
苛烈な競争の現実世界。それとは対照的に、甘く優しい言葉だけが紡がれる仮想の恋愛空間……2つの世界の鮮やかなコントラストが、物語に深い陰影をもたらしている。特に、毎月のように新しい理想の恋人を設定できる流れは、一見すると空虚な現実逃避のようにも思える。