欧州派遣の際に撮影された27歳の渋沢。まさにこの時、フリーメイソン、ロスチャイルドとの繋がりができたとの都市伝説が…

 一介の農民から身を立て、幕末・明治の動乱を泳ぎ切り、日本経済の礎を築いた偉人、渋沢栄一。現在のみずほ銀行に東京電力、JR、帝国ホテルにキリンビールなどなど、ありとあらゆる分野の企業500社以上を立ち上げ、まさに現代日本の経済をグランドデザインした異能の人だ。

 しかし、その一方で、倒幕派の攘夷志士のはずが徳川家の家臣に。さらに明治維新後は敵方だったはずの明治新政府の大物官僚にと、次々と「謎の転身」を遂げ、その度に当時から毀誉褒貶(きよほうへん)の激しかった人物でもあった。

 今回は全7回のシリーズとして、この偉人にして異能の人・渋沢栄一の謎多き生涯と、知られざる一面に光を当てていく。第3回、第4回(9月13日公開)第5回(9月14日公開)は渋沢栄一の生涯で最大のミステリー、あの秘密結社・フリーメイソンとの因縁を前中後編で紐解く。

 

 

 

■維新の陰で蠢いた秘密結社の手が渋沢栄一にも伸びてい!?

 

 攘夷倒幕のテロリストから一転、徳川家御三卿・一橋家の家臣となった渋沢栄一。主君の徳川慶喜は幕府で重責を担い、次期将軍の声望も高かった人物だ。言ってしまえば、中核派の活動家が自民党総裁候補の私設秘書にでも鞍替えしたようなもの。これだけでもとんでもない話なのだが、徳川幕府内部からの改革を志したのか、渋沢はみるみるうちに出世の階段を駆け上る。

 恩人で一橋家内での後ろ盾でもあった平岡円四郎が暗殺される悲劇もあったが、一橋家の財務体質を改革するなど実績を重ね、遂に徳川慶喜の側近となった。そして、(渋沢は「最悪のタイミング!」と大反対だったようだが)慶喜が十五代将軍の座に就き、さらに幕府中枢で腕をふるうところだったのだが、ここで再び、渋沢の人生を変える一大転機が訪れる。