■中国を代表する「生きた化石」白と黒の愛くるしいあいつ

 パンダといえば、中国を代表する動物。白と黒のツートーンカラーの見た目はなんとも可愛らしく、ぬいぐるみやアニメのキャラクターとして愛されている。現在、その生息地は非常に狭く、チベット高原の東端、中国西部の温帯山地林の6か所ほどの分断された山岳域で、竹が育つ標高1,200~3,400mの高地に限定されている。

2020年カメラが捉えた野生パンダ 四川省

 また、パンダは「生きた化石」とも呼ばれる特殊な生物で、約600万年前に中国大陸に現れてから、白と黒のツートンカラーや六本の指など、ほぼその形態を変えていないのだという。

 まさに「雄大なる中国の歴史」を象徴するパンダだが、ここへきて中国人民を震撼させるような発見が相次いできている。なんと、パンダの祖先、原始パンダとも言える存在が、中国から遠く離れたヨーロッパで生息していたことを示す証拠が次々と発見。パンダの源流は中国ではないかもしれないというのだ!

■偉大なるパンダの歴史が欧州に奪われる⁉

  2022年8月2日に公開されたCNNの記事によれば、欧州の湿地帯に600万年前に生息していたジャイアントパンダのこれまで知られていなかった種が、ブルガリアの博物館が収蔵していた2本の歯の化石から発見されたという。体の大きさは現代のジャイアントパンダと同程度かやや小さく、歯の形状から主に植物を餌にしていたと思われる。

 ここまでなら「中国でも600万年前から生きていたし、なんなら竹が主食なのでこっちが本家!」と主張することもできるが、さらに五星紅旗の旗色が悪くなるような情報もある。

 2012年、スペインのサラゴサ市近郊で動物の歯の化石が発見され、1100万年前に、湿潤な森林地帯だったスペインにパンダの祖先が生息していたことが判明した。体重は60キロほどで、現存するクマ科最小種のマレーグマよりも小さかったという。

 学術誌『PLOS ONE』に発表された論文では、筆頭著者のファン・アベラらがこの骨の分析の結果、ジャイアントパンダ属の西ヨーロッパ起源説を主張し、

「間違いなくジャイアントパンダ属の最古の種だ」

 と断言しているのだ。今後もこのような発見が続くことになれば、「偉大なる(中国が誇る)パンダの歴史」がヨーロッパに奪われてしまうことになる。パンダを熱烈に愛する中国の人々にとってはたまったものではないだろう。