■最も凶悪なギャングMS-13の誕生
MSは「マラ・サルバトルチャ」の略。13はカリフォルニア南部のラテン系ギャングの連合体スレーニョスを統括するプリズンギャング「メキシカン・マフィア」に忠誠を誓う証。
組織の結成は1980年代のアメリカのロサンゼルスのピコ・ユニオン地区。1980年から本格化したエルサルバドル内戦により、アメリカへ亡命を申請したエルサルバドル人の多くは不法移民とされた。そして、この不法移民の若者たちがMS-13の源流となったのだ。
当初はヘビーメタルのファンのグループで、何人かはサタニズムに傾倒。今でもMS-13が使用するデビルズ・ヘッドのハンドサインやタトゥーは、ヘビーメタルのファンが使用するメロイック・サイン(コルナ)が元になっている。
そういった移民の若者たちが、他のギャング集団から自分たちを守るためにギャングへと変貌したのがMS-13の始まり。当時のロサンゼルスにはメキシコ系、アジア系、アフリカ系のギャングが存在し、自警する必要があったのだ。
■組織加入の際には凄惨な「血の儀式」
メンバーに入るためには、他のメンバーによって13秒間袋叩きにされる「ビートイン」と呼ばれる儀式を受ける必要がある。一般に他のギャング組織はメンバーを加入させる際、その資格が本当にあるのか慎重に選ぶ傾向があるが、MS-13は積極的にメンバーを増やそうとする。ただし一度加入すれば、脱退は死を意味するという。
メンバーは体中に「MS」「Mara Salvatrucha」「devil’s head」、「下位組織の名前」などの文字を刺青で彫り、組織への忠誠を誓う。体のどこかに彫る「3つの点」は「刑務所・病院・死」を意味する。刑務所にいるメンバーは顔まで彫っているケースが見られるが、2007年以降はMS-13のメンバーと気づかれずに犯罪を行なうため、顔へは彫らないようになったという。