■津軽半島の海岸に伝説のUMA「ヒトガタ」が漂着!?
異形の馬が放されるはずだった陸奥国(青森県)津軽半島は、この当時、人ならざる者の住む異界や世界の果てというイメージだったようで、異形の馬事件の約50年後にも奇怪な事件が連続して起きたと『吾妻鏡』に記されている。
宝治元年(1247)5月、津軽の浜辺に「死人のような姿の大魚」が打ち上げられた。魚と書いてはいるもののその姿は人間そのもの。要は日本発(?)のUMA「ヒトガタ(ニンゲン/注1)」のような化け物が異界の浜辺に現れたというわけだ。
なお『吾妻鏡』によれば、以前にも同じような魚(ヒトガタ?)が漂着したことが3回あり、その度に「奥州藤原家滅亡」「源頼家暗殺」「和田一族滅亡」と不吉な事件の予兆と恐れられたという。
しかも、翌宝治2年(1248)9月にもまた「ヒトガタ」が漂着。この合間に鎌倉最大の内乱の一つ「宝治合戦」が起こって、あの三浦一族が滅亡。まさに災いを告げるUMAだったのだ。
注1/ヒトガタもニンゲンも北極や南極の海で日本の漁船員が目撃したとされるUMA(未確認生物)。2ちゃんねる発祥ともされるが、いずれにしろ日本が発信源の珍しいUMA。
■浅草寺に「牛鬼」が出現し僧侶7人が即死!?
不吉の予兆どころか直接人の命を奪う化け物の話も『吾妻鏡』には記されている。現れたのは武蔵国浅草寺。建長3年(1251)3月のとある日、「牛のようなもの」が突然出現して境内中を走り回ったという。ちょうど食堂に集まっていた僧侶たちが目撃。うち7人がその場で死亡。24人も病を発症し寝たきりになった。
この「牛のようなもの」とは何か。牛頭で人を喰らう化け物ならミノタウロスだがあちらは古代ギリシャの伝説。日本で人の命を奪う牛のような化け物といえば「牛鬼」だが……。
一説には、僧侶が倒れた急な病とはインフルエンザなど何らかの伝染病で、こうした流行り病を運んでくる牛のようなもの=牛頭天王だともされる。ただ、少なくとも日本では即死する伝染病なんて聞いたことがないので、牛鬼に喰い殺された(でそれを見てショックで心神喪失になった)という説を取りたい。