赤道にまたがる1万7504の島によって構成される南国の楽園、インドネシア共和国。雨季と乾季がある熱帯性気候で、平均気温が27~28度。島ごとに独自の進化を遂げた動物が生息し、スマトラ島にはトラ、オランウータン、サイ、ゾウなどが共存している。

南国の楽園、コモド島の美しいビーチ

 そんなインドネシアの美しいビーチに囲まれた小さな島で、人間の祖先が誕生したばかりの500万年前から生態系の頂点として君臨する“伝説のドラゴン”が生き続けてきた……。

 ヨーロッパ人にその存在が知られたのは、1910年のこと。当時インドネシアははオランダによる植民地支配を受けていたが、「陸のワニがいる」という噂がオランダ植民地政府に届けられたのがきっかけだ。1912年、オランダ人科学者でジャワ島ボゴール動物博物館の館長、ピーター・オーウェンズ書いた論文によって知られることとなった。

■謎多き生物「コモドドラゴン」

まさに「ドラゴン」の名にふさわしい風貌

Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons

 日本ではコモドオオトカゲ、海外ではコモドドラゴンと呼ばれるこの生き物は、インドネシアのコモド島、リンチャ島、フローレス島、ギリモタン島に生息する世界最大の大トカゲの一種。

 最大サイズは3メートル、体重は166キロ。げっ歯類、コウモリ、サル、ジャコウネコ、鳥、ヘビなどから、大人の個体であれば、シカ、イノシシ、水牛をエサとして食べる巨大生物だ。分布地域にはかつて小型のゾウがいたため、それを食べるために大型化した、という説もある。

 顎は180度近く開き、その歯はノコギリのような小さなギザギザがあり、獲物の肉を簡単に切り裂いてしまう。長い間、口の中には腐敗菌が増殖しており、噛みつかれた動物は敗血症を発症して死亡する、と考えられてきた。

 しかし、近年の研究により、コモドドラゴンは血液の凝固を阻害し、失血によるショックを引き起こす毒を持っていることが判明した。

 嗅覚は非常に鋭く、4~10キロ先から屍肉の臭いを嗅ぎつけられる。頭皮の下には骨質の“鎧”がある。走力の平均時速は20キロで、100メートルを20秒で走り抜ける。バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)で、タレントのイモトアヤコ(36)がコモドドラゴンに追いかけられたシーンを記憶している人も多いだろう。

 一般にコモドドラゴンが人を襲うことは少ないが、2001年に女優のシャロン・ストーンの当時の夫であったジャーナリストのフィル・ブロンスタインが、ロサンゼルスの動物園の見学ツアーに訪れていた際、足を噛まれて重症を負った。

 1920年にコモドドラゴンは保護の対象とされ、1070年にはインドネシア政府により、生息地がコモド国立公園に指定された。インドネシア発行の50ルピア硬貨にはコモドドラゴンが描かれている。

インドネシアの50ルピア硬貨

 農地開発、森林伐採による生息地の破壊、密漁などにより生息数は減少し、現在の生息数は推定3000頭。名古屋市では、東山動植物園での展示を目指して計画が進められているが、交渉は難航している。

■全長7メートルの絶滅したはずの祖先が今もオーストラリアに棲息!?

 コモドドラゴンの祖先は、約4000万年前にアジアで誕生したヴァラヌス属がオーストラリアに移動して巨大に進化。コモドドラゴンの近接種で絶滅したとされるメガラニア(ヴァラヌス・プリスカス)は、推定体長が7メートル。サッカーゴールの端から端まで、という巨体を誇り、4万年前のオーストラリアの地層から化石が発見されている。

 メガラニアはすでに絶滅したと考えられているが、近年、オーストラリアでは巨大なトカゲを目撃した、という報告がいくつか上がっている。その大きさは「9メートル」「7メートル」など様々だが、オーストラリアの未確認動物学者レックス・ギルロイ氏は「メガラニアは現在も生き残っている」と主張している。

 現在、ブルンジ共和国のタンガニーカ湖に生息するとい言われる巨大なナイルワニ「ギュスターブ」の推定体長は6メートル。いまも地球のどこかで、未知の巨大なオオトカゲがチロチロと細い舌を伸ばしているかもしれない……?