■映画化もされた都市伝説「スレンダーマン」とは
「Slender Man(スレンダーマン)」と聞いても、よほどの都市伝説好きでもなければ日本の読者にはピンとこないところだろう。しかし、アメリカでは大手映画会社ソニーピクチャーズが映画化するほどよく知られた存在なのだ。
黒いスーツに身を包んだ、異様に背が高く不気味なほど長い手足(時には長い触手をもっているとも)、のっぺらぼうあるいは無表情の男で、子どもを狙っては付け回したり、拉致したりするという。なかには「古代から存在し、太古に描かれた壁画にも登場している」などとも噂され、その正体は謎に包まれている。
……と様々な”伝説”がささやかれているものの、このスレンダーマンの発祥はハッキリしている。実は、ネット上の掲示板でユーザーが画像編集ソフトPhotoshopを使って「超常的な画像を作成する」ことを競うコンテストから生まれた架空のキャラクターなのだ。
先に挙げたような特徴的なフォルムや「子供を誘拐して殺す」「子供を拉致してトラウマを与える」「森に近い場所で確認される」「瞬間移動ができる」「背中から触手が生えていることもある」といったディティールも、ネットの書き込みから形づくられたもので、一般的な神話や伝説のような”物語”は存在しない。
そして、スレンダーマン伝説の発端となったのは……
「僕たちは行きたくなかったし、僕たちはみんなを殺したくなかったけれど、あいつのいつまでも続く沈黙と伸ばされた腕は、僕たちを怯えさせながら同時に安楽にもさせた……。
スターリング・シティ図書館の火災現場跡から回収された2枚の写真のうちの1枚。14人の子どもたちが失踪した当日に撮影されたものであり、「スレンダーマン」と称されるものが写っている。当局は、人物の奇形はフィルムの欠陥によるものと述べている。図書館の火災は、その1週間後に発生した。写真の現物は証拠物件として押収された。
1986年、撮影者メアリ・トマス、1986年6月13日失踪」
という文章と共に投稿された、1枚の写真だ。
これをきっかけにネット上ではスレンダーマンに関する恐ろしげな都市伝説が数多く創作され、さらには、過去の文献や遺跡から「これはスレンダーマンなのでは?」という指摘が相次ぎ、都市伝説・オカルトファンの間で人気になった、というのが、この都市伝説の真実の歴史。