■中国で発見された「羽毛恐竜」の衝撃
冷戦時代、中国はゴビ砂漠の調査を禁止していたため、大量の化石が手つかずで残っていた。90年代からの改革開放政策以降、ゴビ砂漠からは新しい恐竜の化石が次々に発見され、古生物学を根本からひっくり返す発見が続いている。
1996年、中国・ゴビ砂漠で頭のてっぺんから背中、尾まで羽毛の痕跡が残っている恐竜の全身の化石が発見された。体長1メートルほどで二足歩行をしていた恐竜は「シノサウロプテリクス(=中国の竜の翼)」と名付けられ、大論争を巻き起こした。
恐竜は学名でディノサウルス、怖いトカゲという意味だ。長年、多くの恐竜の研究者が恐竜は爬虫類だと考えていたところに、羽毛恐竜の出現である。トカゲにも蛇にも羽毛は生えていない。生えているのはウロコだ。では、羽毛恐竜は爬虫類ではなく、鳥の仲間なのか?
■恐竜は羽毛で覆われた派手な鳥だった!?
さらに2008年、シノサウロプテリクスの羽毛部分を電子顕微鏡で観察したところ、メラノソームという色素を含む細胞器官が見つかった。メラノソームは現在の鳥の羽毛に見られる器官で、そこからシノサウロプテリクスは体にオレンジ色の羽毛が生え、尻尾はオレンジと白の縞模様だったことがわかった。恐竜はサンバカーニバル並みに派手だったらしい。
カラフルな羽毛の生えた二足歩行のトカゲ……どう見ても鳥である。
当初は多くの学者が、小型恐竜のみに羽毛があったと考えた。爬虫類である恐竜の一部が鳥類へと進化したとし、その途中で羽毛の生えた小型恐竜が出現したというわけだ。
■ネッシーは恐竜ではない
恐竜は爬虫類であり、恐竜が進化して鳥類が生まれたという考え方は、原初の鳥である始祖鳥が発見された当時から言われていたので、特に問題はない。始祖鳥の仲間が思ったより早くから恐竜と共存していたのだ、と学者たちが納得しかけたその時──。
ちなみに、いわゆるネッシーや映画『のび太の恐竜』のピー助(≒フタバスズキリュウ)などの海に棲んでいた首長竜やプテラノドンなどで知られる翼竜は、鳥ではなく爬虫類だ。恐竜は鳥と同じく脚が骨盤からまっすぐ生えているが、首長竜や翼竜は爬虫類のように足が横に突き出しているからだ。
恐竜は鳥で、ネッシーは恐竜ではなく爬虫類。本当にややこしい。
(第2回/恐竜がデカくなったのは重力のせい!?/7月29日公開)