■異端の学説、地球膨張説
ではもうひとつ、地球が今より小さかった説はどうか?
これは「地球膨張説」といい、プレートテクトニクス理論(注3)が登場するまで地球科学の主流の考え方だった。
注3/地殻はいくつかのプレート=岩盤が重なってできており、プレートが地下のマントルの動きに合わせて移動しているとする説。
巨大大陸パンゲアをご存じだろうか。かつて一つの巨大な大陸だけが存在し、それが分裂して現在の大陸や島を作ったというものだ。これを「大陸移動説」といい、1912年にドイツの地球物理学者アルフレッド・ウェゲナーが発表したものの、当時は地面が移動するものかと誰も相手にしなかった。
大陸移動説は1950年代に再評価されたが、問題は「どのような仕組みで大陸が移動したか?」だった。ここで登場したのが地球膨張説だ。地球が風船のように膨れ上がることでパンゲアが分裂し、今の大陸の姿になったというのだ。
■どれだけ膨張しても重力は増えない?
地球内部にある超高密度の金属が液化したり気化することで、内部から地球が膨れ上がるというのが当時の主張だった。結局、プレートテクトニクス理論に対抗できるだけの証拠を挙げられず、地球膨張説は廃れていく。
仮に地球膨張説が正しく、地球が膨れ上がっているとしても、重力が大きくなる理由にはならない。重力が大きくなるには、地球自体の重さが増えるしかないからだ。固体が溶けて液体になって体積が増えても、重さは変わらない。
むしろ小さかった地球では、重力は大きくなるはずだ。
重力は物体の重さに比例するとともに、重心からの二乗に反比例する。地球を離れて宇宙に出るとどんどん重力が弱くなるのも、重力が地球の重心からの距離の二乗に反比例するためだ。
地球の重さは同じでも、サイズが大きければ、重心までの距離はそれだけ大きくなる。重心までの距離と重力は反比例するので、昔の地球が今より小さかったとしたら、それだけ重力は大きくなっていたはずなのだ。
恐竜の時代の地球の大きさが今より小さかったら、重力は今よりも大きい。これは「昔の地球は小さかったので、重力は今より小さく、恐竜は大きくなった」説を否定する。また当時の地球は今よりも速く回転し、遠心力も大きかったけれども、重力を打ち消して恐竜が大きくなるほど大きくはなかった。
となると「地球の重力が小さかったから恐竜は大きくなった」説は、ありえない。じゃあなぜ恐竜は、あの巨体を支えられたのか? 体が重すぎて支えられないんじゃないのか? 映画「ジュラシック・パーク」の恐竜のように軽快に走り回るのは間違いで、昔の怪獣映画のように、やっぱり恐竜は鈍重な生き物で、ノソノソ歩いていたのではないか?