■そもそも恐竜のイメージから間違っている
恐竜はなぜ巨大だったのか? 前回まで、変温動物の爬虫類が体を冷やさずに活動できるように巨大化したという説や重力が弱かったから巨大化した説を紹介したが、どちらも的外れだった。
科学者の言うことなど、いつもそんなものである。人と違うことを言わないと研究費が……まあ、科学者も家賃を払わなきゃいけないので、大人の事情があるのだ。では真相は?
ひと言で言えば「恐竜のイメージ」が間違っている。今の中高年が恐竜に抱くイメージは、ゴジラのように脚を地面にまっすぐつけて背筋を伸ばして胸を張り、尻尾を地面に引きずりながらゆっくりと歩く、まさに立ち上がった巨大トカゲだろう。
恐竜が爬虫類(はちゅうるい)の一種なら、それは正しい。体が大きければ体重も重く、丘に上がったワニの鈍重さだ。しかし第1回で今どきの恐竜は「羽毛恐竜」だと紹介した。フワフワのモフモフなのだ。
フワフワのモフモフで、サンバカーニバルのTバック娘のようにド派手な生き物、それが恐竜である。そんな派手な生き物がワニのようにノソノソ歩くだろうか? サンバカーニバルが町内の盆踊り大会で炭坑節なわけがないのだ。ラテンのリズムはもっとビートが効いている。
■昔の教科書の「恐竜想像図」は今や大間違い
羽毛恐竜が見つかった1990年ごろから、恐竜がノソノソ歩いていたのは、骨の構造上、おかしいんじゃないか? と言われ始めた。恐竜は、尻尾と頭でバランスを取りながら歩いていたのではないか?
足の付け根を中心に、前に伸ばした頭・首と後ろに伸ばした尻尾でバランスをとると考えれば、ティラノザウルスの巨大な頭やアパトサウルスの長い首も納得できる。
背中は地面と水平で、顔を前に突き出し、尻尾をピンと持ち上げてダチョウのように走り回る、映画『ジュラシック・パーク』の走り回るティラノザウルスのイメージだ。地面と水平な姿勢なら、恐竜はノソノソではなく、ラテンのノリでビュンビュン動けるわけだ。
第1回で紹介した四足歩行のアパトサウルスも、尻尾と首でバランスをとっていたと考えられる。横から見ると完全にやじろべえだ。また首は上下20度ほどしか動かせず、真上には伸ばせないことがわかった。だから昔の教科書に載っていた、まっすぐ空に向かって首を伸ばしているアパトサウルスの想像図は間違いだ。