【前編あらすじ】

 現在は特撮番組などに出演する俳優の滝晃太朗さんの語る心霊体験談。京都・三条寺町の一風変わった居酒屋でバイトをしていた20代の滝さん。店のあちこちに霊が出没するという噂もあったが、お盆のある深夜、客足も途絶え大広間の清掃に向った滝さんは、異様な気配と吐き気を催すような猛烈な気持ち悪さに襲われる。

 その気配の先に「黒いもやのような何か」を感じ、逃げるように店を離れた滝さんだったが、その帰り道に再び怪異が襲う。バイト仲間で霊感のあるA子に慌てて電話すると、思いがけない一言が──。

(前編はこちらから)

お盆の時期、バイトをしていた三条寺町の店で奇妙な体験をしたと語る滝晃太朗さん

/滝さんの出演情報などはこちらから→滝 晃太朗(@kohtarotaki)さん / X (twitter.com)

■滝君、子供の霊が憑いているよ……

「居酒屋にいた子供の霊が憑いていると……。A子によれば、じつは出勤時に見たことのない霊を目撃していたそうです。お店に入ってすぐの男子更衣室に、頭から血を流している小学4年生~5年生くらいの男の子がいたらしくて。ドアの内側から『開けて開けて』と訴えていたとか……」(滝さん/以下同)

 

 ただ、彼女自身は「ちょうどお盆の時期だし、スタッフの誰かに憑いてきたのかな」と思い、気にしていなかったらしい。

写真右側が当時、滝さんが怪異体験に遭遇した店の入っていたビル

「A子が言うには、『知り合いっぽいよ。滝くんの肩に乗って、きゃっきゃと喜んでいる。悪さをしようと思って憑いてきたわけじゃないっぽい』とのことでした。

 ただ、知り合いと言われてもピンとこないし、ましてや家にまで連れて帰りたくない。必死になってA子にお祓いの方法を教えてくれと頼みました」(前同)

 

電話越しに「まずは親御さんにお願いして、家に入る前に塩をかけてもらって」と指示され、いったん通話を切った滝さん。痛む身体で自転車を押しつつ、なんとか実家へとたどり着いたときには深夜2時を回っていた。玄関先で塩をかけてもらうため、外から電話で母親を起こしたという。 

 

■指示通り祓えたものの、翌朝、衝撃の事実が!

 

「母親には『こんな深夜になんなの!』とブチ切れられましたが、渋々といった様子で塩をかけてくれました。すると玄関に入った瞬間、いきなり肩が軽くなったんです。何かが下りた感覚がしましたね。再度A子に電話すると、今度はコップや数珠、お菓子を枕元に用意するように言われました」(同)

滝さんの証言をもとに再現したお供え

 水を入れたコップに塩をひと摘み入れ、数珠を輪にし、その中に先ほどのコップを置く。お供え物として、飴などのひと口サイズのお菓子も添えるよう指示された。ベッドサイドのローテーブルにそれらを置き、やっと緊張が取れた滝さん。その晩は金縛りに遭うこともなく、ぐっすり眠りについた。

 

 だが、翌朝目覚めた彼を待っていたのは、鬼の形相をした母親だった。

 

「夜中に叩き起こしたので、何だったのか説明しろと怒られましたね。でも、事情を話しているうちに、母親の顔がどんどん曇っていって……」

 

 話を聞いた滝さんの母は、「……でも、子供やったんよね……?」と、妙なことを呟いた。不審に思った滝さんが尋ねると、戸惑いがちにこう返ってきたという。

 

「近所のBくんが、つい最近バイク事故で亡くなったんよ。頭からガードレールに突っ込んで、ほぼ即死だったって……」

 

 Bくんというのは、滝さんの弟の同級生。小学生の頃、滝家によく遊びに来ていた子だ。母親の話を聞き、一瞬「え、じゃあアレはBくん……?」と思った滝さん。しかし、憑いてきたのは子供の霊だ。17歳で亡くなった彼とは、年齢が離れすぎている。

 

■やはり子供の霊は本当にBくんだったのか……

モヤモヤを抱えていた滝さんの耳にある情報が……

 あれはいったい誰だったのか。モヤモヤしながら過ごしていた滝さんの耳に、とある話が飛び込んでくる。

 

「幽霊は生前いちばん楽しかった頃の姿に戻ると、TVか何かで知って。それで、『あ、やっぱりあれはBくんやったんや』と納得しました。

 というのも、Bくんの家庭は少し複雑だったので、私が知る限り彼にとっていちばん楽しかった時期が、小4~5年の頃なんです。もしかしたら、『〇〇の兄ちゃんや』って思って、私に憑いてきたのかもしれないですね。それか、彼と何か波長が合ったんでしょうか」

 

友人の兄に憑いてしまったBくんの霊は無事、此岸に帰れたのだろうか……

 その年が初盆だったBくんは、あの世から自宅へ帰る途中に滝さんを見つけ、憑いてきてしまったのだろうか。あるいは、お化け屋敷のような場所に惹かれて寄り道をしていたところで、友人の兄を見つけて嬉しくなったのかもしれない。

 

 お盆だからこそ起こった、怖くて切ない心霊体験談。不幸な事故で急逝してしまったBくんの魂は、ひと夏の再会を楽しめたのだろうか──。