■カワノ、謎の不調に襲われる
ここ最近、なんだか運が悪い……。体調もいまいちよくないし、関連サイトで書いているボートレース連載では舟券を買っても負けてばかりだし、しかも常に金欠である。
「今年に入って本当にツイてないんですよね~」
東京で、当連載の打ち合わせをしたときに、電脳奇談の編集長S氏に相談を持ちかけてみた。
「……ほう、運気が下がったようなきっかけでもあったんですか?」
目を輝かせながらS氏はすぐに話に飛びついた。
「自分でもきっかけになったような覚えはないんですけれどね。今年から始めたものといえば……奇談で連載を始めるようになったくらいですかね……」
私がそう言うと、S氏は急に口をつぐんだ。そして、しばらく沈黙した後、とんでもないことを口にした。
「実は、カワノさん以外のライターさんからも言われたんですよ。電脳奇談で書き始めてから身の回りで良くないことが起こったって……」
「え? もしかして『電脳奇談』自体が呪われているって話ですか? 勘弁してくださいよ!」
「でも、それは面白いかもしれないですね。もしかすると悪霊でも憑いているのかも(笑)。そうだ! カワノさん、せっかくだからお祓いでも行ってきたらどうです? それを記事にしてくださいよ!」
この野郎、人の不幸を面白がってやがる……。
「でも、お祓いってどこでやるんですか?」
「それを考えるのがライターの仕事でしょ! では、私はそろそろ飲みに行くので失礼します……」
まさかの丸投げ⁉ こうしてS氏は夜の街に消えていった……。
■そうだ、ユタにお祓いしてもらおう
編集長S氏に「お祓いしてくればいいんじゃない!」とまさかの企画を丸投げされ、途方に暮れる私。クソ〜、お祓いって簡単にいうけれど、どこでやってもらえばいいのよ!
この日からお祓いについて色々、調べてみた。どうやら、お祓いというのは基本的に神社で行うらしい。しかも、自分が住んでいる近所の神社でやるのがよいとされているらしいのだが、正直、近くの神社にあまり縁がないんだよなぁ。どうせなら、もっと縁のある場所でやりたいじゃん……?
「そういえば、9月に沖縄に行く予定があったな……」
当連載でも度々、テーマになる沖縄の不思議な話。私は霊的なものをそこまで信じるタイプではないんだけれど、沖縄の不思議な話は結構、興味があったりする。そのとき、閃いた。
……そうだ、ユタにお祓いしてもらえばいいのでは?
ユタとは、沖縄の霊媒師のことで普通の人間では感じる事や視ることのできない霊界の事や霊的な動きなどを見通す事ができる。沖縄では運勢や結婚や妊娠、さらに家族や先祖供養のことまでユタに相談する人も少なくないのだとか。
以前の連載でもユタの話を書いたことはあるが、私も実際に会ったことはない。しかもユタにお祓いしてもらうなんて、なんだか面白そうじゃない?
■ユタ探しは難航…
いざ、ユタに会ってお祓いをしてもらおうと思ったものの、これがなかなか簡単ではなかった。まず、私は沖縄出身の友人を訪ねてみた。
「沖縄でお祓いできるユタ知らない?」
友人「お祓い系ですか……。名前はわからないんですが、沖縄の◯嶺という場所に有名なユタがいますよ。『◯嶺のユタ』と調べればすぐに出てくるはずです」
私は早速、「◯嶺のユタ」と検索した。しかし、いくら調べても「◯嶺のユウタ」というちょっとヤンキーっぽい奴のSNSしか出てこない。誰なんだよ、◯嶺のユウタ……。
友人いわく、今はユタの成りてが少なくなっており、年齢的な問題ですでに亡くなっているユタも少なくないという。もしかすると◯嶺のユタもすでにお亡くなりになっているのかもしれない。
続いて、訪ねたのはサブカル系やアングラ系に詳しいライターだ。つい先日も沖縄に取材に行ったと話していたから、もしかしたら紹介してもらえるかも。すみませ〜ん、沖縄でお祓いできるユタ、知りません?
「……ユタですか。僕も取材したいんですよ。でも、地元の人に聞いても『知り合いにはいるけど』と言うだけで、実際に紹介してくれないんだよね。知っていても簡単に会わせてくれないんじゃないかな……」
……まじすか。ユタって取材NGなの? もし、そうだったら企画自体がコケる可能性がある……。よし、こうなったら現地へ飛んで自力で探すしかない! こうして、カワノは憑き物を払ってもらうべく、沖縄へと飛び立ったのであった──(次回・後篇に続く)。