■「海の遊牧民」の村で遭遇した数々の心霊体験
世界有数の観光地であるフィリピンのセブ島。美しいビーチに囲まれた島の片隅には、謎多き少数民族「バジャウ族」が暮らしているとご存じだろうか。
彼らは「海の遊牧民」とも言われ、かつては船の上で暮らしていた。現代では海上に建てた質素な家に住みながら漁をし、独自の文化や信仰を築いている。
そんなバジャウ族の村に長年住んでいた松田大夢(まつだ ひろむ)さんは、自然に囲まれた村でさまざまな心霊現象に遭遇したという。
自宅兼ゲストハウスを建てるたびに「幽霊のもてなし」を受けたという彼。東南アジアの一角で起こった恐怖体験を語ってくれた──。
■バジャウの村で結ばれた女性は「視える人」だった
松田大夢さんは今年28歳になる日本人男性。19歳の頃に訪れたセブ島でバジャウ族と出会い、彼らの魅力を伝えたいとさまざまな活動を行なってきた。
外国人でありながら村に家を持つことを許され、現地の女性とも結婚。自然に囲まれたスローライフを送っていたが、じつは自宅でたびたび不可解な現象に出くわしていたという。
「俺自身に霊感はないんだけど、当時の奥さんが視える人で。住んでいた家に“なにか”が来るたび、『今来ているよ』って教えてくれていたんだ」
大夢さんの妻だったシャイマさんはバジャウ族の女性。笑顔が素敵な彼女だが、不思議なモノをよく視ていたらしい。
■大夢さんの家に毎日のように現れる「常連の霊」?
彼らの自宅には、いつも同じ霊が訪れていたそうだ。
「ある日、シャイマが『またアイツが来ている』って言って。ピンポイントで『あそこにいる』って指差したんだ。もちろん俺には何も見えなかったから、『どこにいるの? 俺にも分かるように何かやってほしい』ってお願いしたんだよ」
するとシャイマさんは、何もない空間に向かって突然話し始めた。そこに居るという霊に対し、『大夢に何かして』と伝えたそうだ。
「そしたらさ……目に見えない何かに、肩をサーッと触られたんだ……」
驚いた大夢さんがあたりを見渡しても、そこには何もいない。そんなことが日常的に起こっていた。
■幽霊の“お告げ”でなくしたはずの財布を発見!?
謎の存在は、ときにちょっとした役に立つこともあったのだとか。
「家の中で物をなくしたとき、ソイツに聞けばどこにあるか教えてくれていた。たとえば財布をどこかになくしてしまって、探しても全然見つからないことがあってさ。シャイマに『お化けに聞いてみてよ』って頼むと、別の部屋に行ったんだ。すきまから覗いてみたら、見えない何かとしばらく喋っていて……部屋から出てきて『リュックの中に、こういう風に手を入れてみて』と指示されたんだ」
言われた通りの方法で、部屋に転がっていたリュックに手を差し込んだ大夢さん。すると、手が触れた先に探していた財布があった。
探し物を教えてくれる便利な幽霊。しかし得体の知れない存在の超自然的な力を借りた行為には、代償があった──。
「探し物が見つかると、ソイツはシャイマに憑依しちゃうんだよ。普段は日本語か英語、ビサヤ語(注1)で会話しているのに、憑りつかれたときはバジャウ語でしか話さなくなるの。完全に別人になってしまって、数分経つと我に返って元に戻るんだ」
注1/フィリピン中央部、セブ島などで話される共通語
憑依されている間の記憶はシャイマさんに無いものの、霊が抜けたあとは体がものすごく重く疲労感がすごいと言っていたそうだ。
霊の正体は彼女にも分からず、男か女かもハッキリしなかった。ただ、同一人物であることだけは確かだったという。しかし、家に現れるのはその霊だけではなかったのだ──。