■イケメンの白人に巨人族にホビット族、古代の人間はさまざま

もはや「ネアンデルタール人」のイメージはこんな感じに変更?

画像:Adobe Stock

 毛をなくした直立するサル、ホモ・エルガステルはアフリカを出て世界へ広がり、ヨーロッパでハイデルベルク原人と呼ばれ、中国で北京原人と呼ばれた。インドネシアのジャワ島まで行き、ジャワ原人やフローレス原人にもなった。

 

 その間、アフリカではホモ・エレクトスはゆっくりと絶滅し、残ったホモ・エルガステルは次なる進化を始めていた。旧人、ネアンデルタール人の誕生である。

 

 猿人から原人、旧人、ホモ・サピエンスまで、人類の進化は、アフリカでのみ起きている。これをアフリカ起源説といい、遺伝子を調べて判明した。

 

 一方、世界中に散った原人が、その地域地域で進化し、すべてが交じり合って最終形態のホモ・サピエンスへと進化した……これを多地域進化説といい、長らく信じられてきたが、間違っていた。ネアンデルタール人もホモ・サピエンスも誕生したのはアフリカなのだ。

 

 なぜアフリカなのか、他の地域でなぜ新種が誕生しなかったのかはわからない。ただし新種が生まれるのはアフリカだが、地域ごとでの最適化は起きている。

 

 例えば、アフリカを出たネアンデルタール人は北へ移動し、色素を失った。スペインで見つかったネアンデルタール人の骨の化石から遺伝子を抽出したところ、突然変異でメラニン色素がほとんど作れなかったことがわかった。

 

 ネアンデルタール人は色素がないから白い肌、恐らくは赤毛~金髪、青い目をしていたはずだ。ガッツ石松的な原始人とは、ずいぶんとイメージが違う。

 

 ジャワ島の先にあるフローレス群島という小さな島で見つかったフローレス原人は身長がわずか1メートルほどしかなかった。まんまホビット族だ。

 

■10万年前の地球のほうがダイバーシティだった!?

フローレス原人の頭部はわれわれ現代人の手のひらサイズの小ささ

画像:Emőke Dénes, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons

 このフローレス原人は脳の大きさが猿人ほどしかないため、発見当初は最初にアフリカから出たのは猿人ではないか? と話題になった。それまでアフリカを出たのは原人以降と思われていたが、実は猿人が最初にアフリカを抜け出し、フローレス諸島まで歩いてたどり着いたと考えられた。しかし、これも遺伝子を調べることで、ホモ・エレクトスの親戚だとわかった。原人である。だから名前もフローレス原人だ。

 

 島嶼効果(とうしょうこうか)といい、食料が少ない島では、小型動物は天敵がいないために大きくなり、逆に大型動物は体が小さい方向へと進化する。フローレス原人は体が小さくなるほうへと最適化したのだ。

 

 ネアンデルタール人と同じ旧人であるデニソワ人は、名前の由来であるシベリアのデニソワ洞窟で、臼歯と下あご、指の一部の化石が見つかっている。この臼歯が大きく、推定される身長はおよそ2メートル。2010年に中国で見つかった旧人の頭蓋骨の化石も非常に大きく、仮にデニソワ人のものだとすると身長は2メートル以上あったらしい。デニソワ人は巨人なのか?

 

 人類進化の行進図に「新人(ホモ・サピエンス)」として出てくるクロマニヨン人は、遺伝子は現在の人間と同じだ。クロマニヨン人は初期のホモ・サピエンスであり、遺伝子は私たちと変わらない。とすると、今の人類がアフリカで生まれたのはおよそ20万年前ということになる(諸説あり)。18万年前の化石がイスラエルで見つかったことから、その頃にはすでにアフリカから旅立っていたことがわかる。

 

 ネアンデルタール人やデニソワ人が滅んだのは3~4万年前で、つまり20万年~3万年前までの間、地球には、われわれ現生人類のご先祖様とともに、フローレス諸島のホビット族やデニソワの巨人族が一緒に暮らしていたわけだ。

 

 バラエティ豊かな古代の地球である。