■お化け屋敷に迷い込んだ‟本物のお化け“たち
「和レストランの閉店は、単純に経営不振が原因だったそうです。ただ、和レストラン時代には、先ほどのウワサ以外にも、 『店内の喫煙室に男性の霊が出た』などの目撃談がたくさんあったみたいですね」
筆者が不可解に感じていた突然の閉店は、あくまで経営上の問題が理由 だったようだ。その後、建物には別の人間がお化け屋敷を開く。その人に誘われる形で、Cocoさんも地下フロアを使ってお化け屋敷をプロデュースすることとなった。
ところが、前身となるお化け屋敷の開業からCocoさんが引き継ぎ、2022年に閉業 するまで、何かと心霊話が絶えなかったという。
「これはお化け役の女性アクターさんから聞いた話ですが……ある日の営業中、どこからか子供の声で『すいませーん』と聞こえたそうです」
そのアクターは「子供客が迷ったのかも?」と思い、すぐに無線で別スタッフに連絡を取った。営業を一時ストップさせスタッフ総出で迷子を探したが、子供の姿はどこにも見当たらない。気のせいだったのだろうか……と、営業を再開したところ、再び『すいませーん』と聞こえてきたそうだ。
「声が聞こえるたびに営業を止めて探すけど、誰もいなかったらしくて。入場したお客さんの内訳を確認したところ、そもそも子供のお客さんは入ってきていなかったんです。声を聞いたのが一人だけなら勘違いか空耳で済みましたが、何人ものアクター、それも女性だけがその声を聞いていたんです……」
■カーテンの向こうから‟なにか“が見つめてくる!
お化け役のアクターたちが体験したのは、これだけではない。
「お化け屋敷の通路の両側にカーテンを設置していて、アクターたちにはその内側で待機してもらっていました。お客さんが通るとカーテンから飛び出して驚かすんです。『待機しているとき、向こう側のカーテンがゆらゆらと揺れて、誰かがチラチラこちらを見ていた』という目撃談がありましたね」
待機していた片側のアクターは、「アイツ何でこっちを覗いているんだ?」と不思議に思い、インカムで各アクターの待機場所を確認した。しかし、対面のカーテン奥には誰も待機しておらず、見に行ってみても無人だったという。一体、ナニが覗いていたのだろうか――……。
「1階でも心霊現象が起きていたようですが、地下は異様に目撃談が多かったです。当時の従業員の半数くらいは、視たり聞いたり感じたりしていました。風水的にも地下には霊が集まりやすいと言いますしね」
自動消灯でもないのに電気がパチパチと消える、は日常茶飯事。正体不明の音が聞こえることもあった。Cocoさんによると、「何かを視た程度の話なら、10、20は軽く超える。私も全部を覚えていないくらい」だそう。
ここまででも十分に怖いが、最恐の心霊現象はお化け屋敷の施工時と撤退時に起こっていた──(さらなる「例の物件」での恐怖体験は後編で……)。
京都府在住。新進気鋭のホラープランナーでありながら、怪談師としても数々のイベントやメディアに出演中。自他共に認める正真正銘のホラーマニア。TikTokのフォロワー数は29万人。SNSの総フォロワー数は40万人を超え、日本トップクラスの知名度を誇るお化け屋敷プロデューサー。恐怖を徹底的に追求するのはもちろんのこと、怖いものが苦手な人も楽しめるお化け屋敷を目標としている。趣味はバイクとカメラ。
「怪談専門のお店 京都怪談商店」代表/「ホラー喫茶 シェフのいないレストラン」監修/「稲川淳二の怪談グランプリ2022」出場/「怪談テラーズ」出演
【著書】
『京都怪談 猿の聲』(竹書房怪談文庫/共著)
『怪談怨霊館』(竹書房怪談文庫/最新刊!)