■人類滅亡後はイカが地球を支配する!?
YouTube/Curious Archiveより(巨大陸生イカ「メガスクイッド」が登場するのは23分30秒頃)
前回、イカやタコに高い知能があることを紹介した。あんなぐにゃぐにゃしている生き物に、犬ぐらいの知能があるわけだ。
たとえばコウイカの仲間には、発情期になるとメスになりすますオスがいるという(※1)。彼らのオスとメスの区別は体表の色だ。体の小さなオスはメスの体色に変わって体の大きなオスを出し抜き、メスの中に混じるとオスの体色に戻り、交尾しようとする。この変化が意識的に行われているのは間違いなく、1時間で20数回も体色をチェンジさせて、うまく周りをだましたオスが観察されている。
彼らは頭がいいのだ。しかもイカやタコは寿命が短い。わずか2年しかない。たった2年で自己鏡像認識があり、道具を使い、言語らしきものでコミュニケーションを行ない、群れで役割分担をし、周りを見て学習し、食事を節制することができる。
彼らが長く生きたら、人類はイカやタコに負けてしまうんじゃないか。実際、ドゥーガル・ディクソンをはじめ数多くの科学者が監修したドキュメンタリー番組『フューチャー・イズ・ワイルド』では、人類が滅んだ1億年~2億年後の世界では、陸上を闊歩するイカの末裔が描かれている。そもそも、古典SFで火星人がタコみたいな格好なのも、案外と本質を突いていたのかもしれない。
■イカやタコの知能は人工知能に近い
その一方で、イカやタコの知能を哺乳類に当てはめるのは、根本的に間違っているという学者もいる。というのも、たしかにイカやタコの脳は大きいが、彼らはメインの脳以外に腕にも小さな脳を持っている。そんな生き物と哺乳類の知能を比べるのは無茶じゃないかというわけだ。
沖縄科学技術大学院大学のタマー・グットニックによると、タコはメインの脳以外に腕に8つの補助的な脳を持つことで、腕の動きを制御しているのだという。
シカゴ大学の滋野修一らは、頭足類の情報処理のやり方がAIとよく似ていると指摘している(※2)。彼らの脳神経網はコンピュータの分散処理ネットワークに似ていて、視覚情報にも非常に秀でていることから、AIのアルゴリズムに利用できるかもしれない。
■昆虫はマシンではなかったのか
豚も賢い、イカもタコも賢い、じゃあ昆虫は? さすがに昆虫に知能はないだろうと思ったらそうでもないらしい。前編で知能を判別する項目を挙げたが、その中に「遊び」があったと思う。生存に関係ないことを楽しんでやるというのは、知能のある証拠だ。
クイーンメアリー大学生物行動科学部のヒルニ・サマディ・ガルペイジ・ドナらは、マルハナバチが遊ぶことを発見した(※3)。飼育しているマルハナバチの巣箱と餌場を結ぶトンネルに、小さなボールを入れておくと、十分に通れるのにわざわざボールに乗って転がすハチが何匹もいたのだ。
たまたまなのか、本能的な動作なのか、それとも「遊び」なのか。
サマディらは通路の途中にスペースを作り、色分けしたボールを置いた。そしてハチの行動を観察した。ボールの中には固定して動かないものもあり、もし休むだけなら、動かないボールでもいいはずだ。そして、実験の結果は──。