■海洋の95%は魔物が潜む未知のゾーン?

リヴァイアサン

12世紀に描かれた海の怪物・リヴァイアサンの姿。

画像:Lambert- Liber Floridus, PD, via Wikimedia Commons

 私たち人類が暮らす地球表面の約7割を占める海。しかし、私たちがその実態を把握しているのはほんのわずか。実は、海洋の95%はいまだ謎に包まれているのだという。それ故か、古代から私たち人類は、そんな謎めいた海に、シー・サーペントクラーケンリヴァイアサンなど魔物や未確認生物の存在を”目撃”してきた。そして、この「未知のゾーン」からは時折、不可解な情報がもたらされる──。

 

 1997年、アメリカ海洋大気庁(NOAA)が深海深くから届いた「奇妙な音」をキャッチした。そもそも、NOAAは冷戦真っ只中のニクソン大統領政権下、1970年に設立された政府機関だ。表向きは「名国民を自然災害から守り、海洋資源の保護や有効活用を図る」という目的の組織だが、その一方で、米海軍が極秘に設置した音響監視システム「SOSUS(ソーサス)」を使い、情報収集していたことでも知られる。

 

海底に潜む潜水艦

冷戦下、ソ連の潜水艦を探知する極秘装置が捉えたものは……。

画像:AdobeStock(AIによるイメージ画像)

 このSOSUSとは、ソ連の潜水艦探知のための設置されたもので、実は1990年代までその存在が秘匿されていた。そんな”極秘監視システム”が、南緯50度西経100度付近、南米・チリ沖約1800kmの深海に響く、非常に大きな怪音を検出したのだ。

 

■NOAAがキャッチした「怪音」とは?

※YouTubeで公開された「Bloop」の解説動画

 

 後に「ブループ(Bloop)」と名付けられたこの怪音は、人類の可聴域を超えた超低周波から約1分間で周波数が急上昇するなど、常識外れな高振幅という特徴があった。さらに特徴的なのは、5000km以上の範囲(ザックリいうと東京からインドのコルカタまでの距離)で聞こえるほど大きな音だったこと。そして、何よりも音の発生源が謎だったことだ。

 

 音の特徴としては、クジラなど海生哺乳類の出す音と非常に似ていたため、NOAAの主任研究員クリストファー・フォックス博士らは、

 

「音の発生源は人工的なものでも、火山や地震など自然現象ではありえない。耳をつんざくような音の特徴から、何らかの巨大な生物と考えられる」

 

海中を泳ぐシロナガスクジラ

地球最大の現生動物シロナガスクジラを遥かに超える巨大生物がブループの発生源?

画像:AdobeStock(AIによるイメージ画像)

 と、発見当初から「生物起源説」を唱えていた。ただ、仮に発生源が生物だったとして、現代の地球上で最大の海洋生物・シロナガスクジラ(体長24〜30m)が出す音の強さから考えると、「ブループ」」を発した生物の大きさは体長215mほどだと推測される。