はいさい! 先日まで沖縄に出張していたカワノアユミです。前回に続いて、今回も沖縄の奇談をご紹介! 今回のテーマは……ずばり「井戸」

 

 2024年3月上旬、衝撃的な記事が沖縄中を駆け巡った。30年ぶりとなる断水の危機が沖縄本島に迫っているというものだ。昨年9月以降、少雨傾向が続き、沖縄本島にある11カ所のダムで貯水率の低下が止まらないという。

 

 沖縄の梅雨は例年5月上旬から6月下旬あたりだが、あと2カ月近くある。現在は少雨が続いており、梅雨までまとまった降雨が期待されないことから、このままでは1994年以来の断水が実施される恐れがある……というのだ。

 

■沖縄の人々にとって井戸とは?

 

【写真1】沖縄市古謝に残る「ウブガー」。旧正月にはこの水をお供えし、さらに健康を祈願して子どもたちの額に三度つける「ウビナディ(水撫で)」という儀式も。

 沖縄と水不足の関係は深い。1981年7月から1982年6月にかけて沖縄本島でなんと326日間も続いた給水制限「本土復帰後の大渇水」。これは、日本の上水道で最も長い日数とされている。

 

 また、1994年1月から3月の2カ月間、午後10時から午前6時までの夜間8時間断水となったとされる「沖縄本島1994年の最後の断水」と呼ばれた大渇水が発生した。そして2024年3月現在、今まさにその危機を迎えようとしているのだ。

 

 こうしてたびたび渇水に悩まされることもあり、沖縄では古くより井戸は大切にされてきた。沖縄では、湧き水や井戸のことを「カー」と言う。 カーにはさまざまな種類があり、地下水が湧き出た所や人間の掘った井戸も含まれる。井泉の中でも浅い井戸になっているものは「カー」、洞窟や岩盤の奥の水脈から樋で水を引いてきたものを「樋川井(ヒージャーガー)」と呼び、井戸によってそれぞれ役割が異なる。一例を挙げるとこのようなものだ。

 

ウガミガー(拝井泉):その昔、人々が湧き水や川、ため池などの水源を求めて集まり、集落を形成しました際に祖先が使用したと言われるもの

 

村ガー:地域の人々が共同で使う共同井戸

 

ウブガー:沖縄にはミジムイとかウビナディと呼ばれる産まれたばかりの赤ん坊の額に水をつける儀式がある。ウブガーとはそのための水を汲むカーのこと

 

ヒージャーガー:洞窟などから湧き出た湧水池のこと。ヒージャーとも呼ばれる。

 

祝女(ヌル)ガー:ヌル(ノロ、祝女)が衣装を洗ったり身を清める専用の井泉

 

■沖縄で見かけたさまざまな井戸

 今回は沖縄で「まちまーい」(前回記事参照)に参加したり散策しているときにいくつかのカーを見ることができたので紹介したい。

 

天日井 (ティーラガー/那覇・牧志)

【写真2】沖縄イチの繁華街・国際通りから路地を一本入った先には、羽衣伝説にまつわる井戸「天日井(ティーラガ―)」がある。

 国際通りの裏道を周るまちまーいに参加したときに教えてもらった、緑ヶ丘公園の南外れにある「天女伝説が伝わる井戸。沖縄には幾つもの羽衣伝説があり、この井戸は天女が降りてきて遊んでいた時に作られたという言い伝えがある。

 

水神ガー(那覇・牧志)

【写真3】同じく牧志の賑やかな商店街のちょいと裏手に静かな森と井戸。いまも古くからの信仰が生活に根付いている沖縄ならではの光景だ。

 散策中に平和通り商店街からすぐ裏手に入ったところで見つけたウガミガー(拝井)。井泉にいると信じられている水神が祀られているという。

 

ソーリガー(沖縄市古謝)

【写真4】
【写真5】昭和30年代まで現役だった古謝の龕屋。後に台風で倒壊したものを地元の有志が古くからあった地元の風習の記憶を伝えるため再建したもの。

 古謝の文化財を巡る「まちまーい」で見学した、葬儀の際に死者を清める水を汲む井戸「ソーリガー」【写真4】。地元生まれの人でなければ利用することができなかったそうだ。なお、沖縄では戦前まで風葬、後に土葬が一般的だった。遺体は棺に納められ、「龕(がん)と呼ばれる輿(屋根が付いたお神輿のようなもの)に乗せて野辺送りされた。普段、その龕を納めておく倉庫のようなものが【写真5】の「龕屋(がんやー)だ。

 

見栄泉ミーガー/沖縄市古謝)

【写真6】村のコミュニティの中心でもあり、ノロなど宗教儀礼や祭祀上の聖地でもあった沖縄の井戸「ガー」。

 水道施設の普及以前は集落の貴重な生活用水だった。また、村の古老によると集落の祭祀を司るノロが髪を洗い身を清めるヌルガーとしても使われていたという。

 

 こうした井戸は現在も文化財などとして保存されており、今でも井戸に線香をあげて祈りを捧げる「井戸巡り」が行なわれているという。いかに沖縄の人たちにとって水が貴重とされ、大切にされてきたかがわかるだろう。

 

■沖縄水不足問題にカワノが人肌脱ぐ!?

 

 今回、沖縄でさまざまな井戸を見て、この島の人たちにとって、いかに井戸が貴重な存在かを学ぶことができた。そんな沖縄はいま、断水の危機が迫っているわけだが……ここで思った。私が沖縄に住んだら水不足を解消できるのではないだろうか?

 

 実は筆者、昔から沖縄に行くたびにいつも雨が降る超がつくほどの「雨女」。沖縄の友人に誘われて名護のリゾートホテルに泊まれば、台風が近づいて暴風雨になる……。一昨年の石垣島に5泊したときは全日程雨で、出かけたりマリンスポーツを楽しむこともなく毎日、飲み屋で大阪のおっさん達と飲んだくれる……。

 

 また、2年前にはすでに発表されていた梅雨明けが、なぜか私が行ったことで長引いたこともあった。なお、今回の沖縄出張の日程も半数以上が雨で一時は洪水かというくらいの大雨が降った。

 

 これらは雨の降る時期を狙って行っているわけではない。むしろ、梅雨や台風シーズンは避けているにもかかわらず、ウチナーからも「最近まで晴れていたのに」「こんなに雨が降ることは珍しいサ~」と言われるほど……。

 

 沖縄では水不足に見舞われると神女(ノロ)による「雨乞い御願(うがん)祭」が行なわれる。2013年8月には久米島で15年ぶりとなる「雨乞い御願祭」が行なわれて、祈願後に一時的に雨が降ったという。私が雨乞いしてもご利益がある気がするんだけれどなぁ……。これは、水不足が解消するまでカワノが沖縄に移住するのもアリ!?