■世にいう「魔性の女」は実在する

キャバクラ嬢

特別な手練手管を使うでもなく、次々男たちがハマってしまう夜嬢は確かにいる

(写真はイメージ) 画像:AdobeStock

 突然だが私、カワノアユミはライターとして、さまざまなジャンルの記事を書いている。意外に思われるかもしれないが、女性向け媒体の仕事も請け負っており、恋愛に関する記事を書くこともある。内容は女性が食いつきそうな恋愛ネタを扱っている。いつの時代になっても好きな男性を振り向かせたいというのは、恋愛媒体で受ける永遠のテーマのようだ。

 

 そして、そのテーマを深堀りしていくと、必ずぶつかるキーワードが存在する。

 

 それが、”魔性の女”だ。魔性の女とは、直感的に男性を虜にし、ミステリアスなオーラを持つ女性を指す言葉だ。最近は「沼らせ女子」(沼る=男性が抜け出せないほどハマる女性)とも言われるが、いずれにせよ「男性を虜にさせたい」というのはどの時代にも人気があるコンテンツらしい。

 

 ……しかし、「周囲が見えなくなるほど男性を虜にさせる魔性の女」は本当に幸せなのだろうか。今回は、魔性ゆえに男はおろか、不幸まで呼び寄せてしまう女の話をしよう。

 

 

■大阪のキャバで出会った№1嬢・ユリカ

筆者カワノが大阪時代に出会った「魔性の女」とは?

 私が東京から関西に移り、大阪のとあるキャバクラで働いていたときに、ユリカ(仮名)というキャバ嬢と出会った。彼女とは今もたまに連絡を取るが、その当時のユリカは、毎日オープンからラストまで客が絶えなかい、店のナンバーワンだった。

 

 人気のキャバ嬢には二種類いる。一つは、数十人から100人近い指名客を持ち、常に指名客で席が埋まっているキャバ嬢だ。人気があるため、指名しても実際に席に着くのは5分から10分程度で、歌舞伎町のカリスマキャバ嬢なんかはこのタイプに該当する。

 

 もう一つのタイプは、指名客の数はそれほど多くないものの、「太客」を抱えているキャバ嬢だ。ユリカはこのタイプであった。そのため、ユリカが接客するのは1日に1人から3人程度と、ナンバーワンキャバ嬢にしてはそれほど忙しくなかった。しかし、その太客のなかの一人「K」は、ほぼ毎日オープンからラストまで店に来ていた。

 

 過去に都内を含め、さまざまな夜の店で働いてきたが、ユリカのようなナンバーワンキャバ嬢を見たのは初めてだった。正直、初めて見たときは、

 

「かなりエグい色恋営業でもしているんだろうな……」

 

 と思っていた。だが、ユリカと親しくなるにつれ、それは勘違いもいいところだったと知ることになる。

 

■なぜか勝手に客がのめり込んでしまう

どちらかと言えばクールな接客なのに「沼る」男が続出するユリカ(写真はイメージ)

 ユリカはどちらかというとサバサバしたタイプだった。見た目は少しキツイ顔立ちの美人系で、実際に気も強かった。接客を見ていてもその印象は変わらず、何度かユリカの席にヘルプで付いたことがあるが、とても色恋営業をしているようには見えなかった。そして、実際にユリカ自身も「色恋はしていない」と語っていた。

 

 しかし、色恋をかけずにどうしてあんなに毎日、オープンラストで客を呼べるのか。ユリカにそう尋ねると、

 

「……なんでか分からないんだけど、向こうが勝手にのめり込んで来てくれるんだよね」

 

 そう、ため息をつきながら言った。

 

 実際に、ユリカ自身は付き合った覚えなどさらさらないにもかかわらず、客から、

 

「大好きだよ」「俺たち、付き合っているんだよね?」

 

 などと言われるのは日常茶飯事だった。もちろん、そのたびに、ユリカは客をスルーしたり、冷たく対応したりしていた。そこで客がどんな反応をするのか気になったが、なんと客は、

 

「そんなところもカワイイなぁ(笑)」

 

 と、まんざらでもない様子であった。……いや、どういう解釈でそうなるのか?

 

 こうして、色恋などおくびにも出さず、むしろ、冷たくあしらえばあしらうほど、男たちが次々と“沼”にハマっていく……よく言う「魔性の女」というのは、コレかと思った。しかも、ユリカ自身が「沼らせテク」などまったく意識していない、天性のところが、ますます「魔性」を感じさせたのを覚えている。

 

 だが、ユリカ当人もため息をついていたように、魔性の女であることは、必ずしもいい事ばかりではなかった。そして、この後、ユリカはその魔性ゆえに不可解な出来事に巻き込まれていくのだった──(以下、後編に続く)