さまざまな事情を抱えた人々が行き交う夜の街。そこでは誰かが突然、姿を消すことがある。その消失の裏には、いったいどんな理由が隠されているのだろうか。沖縄の街で取材を行なっていたカワノアユミが耳にした恐ろしい話をお伝えしよう。
■頻繁に店長が行方不明になる店

その店は、なぜか次々と店長が消えるという──。
(写真はイメージ。本文とは無関係です)
「店長がしょっちゅう、行方不明になる店があるんだ──」
私がその話を聞いたのは沖縄への出張中、飲み屋でたまたま知り合った男性・ヒガさん(仮名)からだった。
ヒガさんはかつて沖縄で複数の夜の店を経営していたそうで、夜の街で交わされる噂話にも詳しかった。そして今回の話は、ヒガさんが商売から身を引くハメになった“いわくつき”の実体験談だった。
「沖縄本島の○✕にある『X』って店なんだけどね。扉には『会員制』って書かれているけど、まあ普通のガールズバーだよ。ただ……実は”ある秘密”があったんだ」
ガールズバーなので、当然ながら店長がいる。しかし、ヒガさんが『X』に通い始めたころから、どの店長も長続きしないことに気づき始めた。客のほとんどは女の子が目的なので、店長が変わったところで気にも留めない。しかし、ヒガさんは次第に、店長の頻繁すぎる入れ替わりに疑問を抱くようになる。
■ヒガさんが感じていた不安が…

「俺も同業だから、つい店長と話して仲良くなっちゃうんだけど、なぜか数週間から数カ月おきに、店長が突然いなくなるんだよ。新しい店長に話を聞いても、急な体調不良や一身上の都合だって言うんだけど、店長が消える頻度があまりに不自然な感じがしてね……」
ヒガさんが感じていた不安が現実のものとなったのは、とくに仲良くしていた店長のSが突然姿を消したときだった。ヒガさんとSは、営業以外でも飲みに行くほど親しくしていた。さすがに心配になった彼は、Sが行方不明になった理由を探ろうと決めた。
それから数日後の深夜。営業終了後の灯りが消えた店の裏口に回ったヒガさんは、裏口の脇にある階段を降りて店の地下倉庫に向かった。
以前、Sの手伝いでビールケースを運んだことがあり、配置はよくわかっていた。そして、そのときSが倉庫の奥にあるドアを指して「あそこは何もないですから、開けないでくださいね、絶対」と妙に念押しする顔つきが気になり、何かが隠されているのではないかと以前から思っていたのだ。