10年くらい前の韓国ドラマ屋根部屋のプリンス』で、主人公(パク・ユチョン)が朝鮮王朝時代から現代にタイムスリップした部屋を覚えているだろうか? タイトルにもなっている「屋根部屋」、あれが韓国ではよく見られる「オクタッパン(옥탑방)」と呼ばれる屋上住宅だ。

ソウルの東のはずれ、江東区にある私の仕事部屋から撮ったもの。あちこちの屋上にオクタッパンが確認できる。韓国人にとっては見慣れた風景だ

■オクタッパンとは?

 漢字で書くと「屋塔房」。つまり、多世帯住宅や雑居ビルなどの屋上に増設された簡易家屋(部屋)のことだ。最上階のさらに上となるので、階段の上り下りが大変。冬は寒く、夏は暑い。水の出が悪い。しかし、映画『パラサイト 半地下の家族』の一家が住んでいた半地下部屋同様、家賃は安く、住居以外のスペースを庭のように使えたり、日当たりがよくて開放的で洗濯物も干せたりするなど、メリットもあるにはある。

 韓国ドラマでは『ショッピング王ルイ』『ピョン・ヒョクの恋』『スタートアップ:夢の扉』など、様々な作品に登場人物の住まいや事務所としてオクタッパンが登場している。

 今回は映画に登場した印象的なオクタッパンをいくつか見てみよう。

ハ・ジョンウ&チョン・ドヨン主演『素晴らしい一日』(2008年)

 かつては恋仲だった二人(ハ・ジョンウ、チョン・ドヨン)が金を借りるためソウルの友人知人宅を訪ね歩く話だが、その友人宅のひとつが南山の中腹にある雑居ビル屋上のオクタッパンだった。

 オクタッパン暮らしには貧乏くささがつきまとうのだが、この映画に出てきた住人たちは裕福で、オクタッパンで肉を焼き、酒を食らう贅沢なホームパーティを開いていた。スノッブたちが酔狂でオクタッパンを利用しているのが鼻につく場面で、妙に印象に残っている。

屋上に住むとなるといろいろ不便があるのだが、映画『素晴らしい一日』のホームパーティのように非日常空間として使うのはおもしろい。ここ数年流行りのルーフトップカフェ(写真)はそんな発想から生まれたのかもしれない