■本作の見どころ&深掘りポイント
『最愛の敵〜王たる宿命〜』の舞台は、政変を起こした功臣たちの力が強く、王が操り人形のように弱い朝鮮王朝だ。現地KBS公式サイトのキャラクター紹介を参考にすれば、朝鮮王朝11代・中宗(チュンジョン)〜12代:仁宗(インジョン)期の、功臣vs改革急進派の士林派(サリムパ:儒学のなかでも道徳を重んじる派閥)の政治闘争が激しく、さらに王の外戚たちの権力闘争も激しかった時代がモデルとなっている。
冒頭、重臣たちが王宮の庭に勢揃いし、王(アン・ネサン)のいる部屋に向かって、現代的にいえば、シュプレヒコールを上げるシーンからドラマがはじまる。臣下が「世子(セジャ:王位継承者)を廃位(身分剥奪)させてください」「王になるべき人物ではない!」と叫んでいるのである。外の声を聞きながら苦悩する王は「もう守れない」と息子に告げる。すると世子イ・テ(イ・ジュン)は覚悟を決め、先頭に立つ重臣パク・ゲウォン(チャン・ヒョク)の前に現れ、首を垂れ、ひざまずいて頼むのだ。「朝鮮の真の王は士大夫(サテブ:両班・官僚)だ。(中略)私を助けてくれ」と――。
王家が臣下に屈している図、これだけで、ただ事じゃない雰囲気がビリビリと伝わってくる。生き残るため、来たる未来のため、すがるイ・テの悲しき瞳。対して、忠実な臣下らしい発言をしつつも、無言の圧を感じさせるパク・ゲウォンのするどい眼力……。今なお多くのファンをもつ伝説の作品『推奴~チュノ~』から『根の深い木』『客主』『私の国』にいたるまで、数々の時代劇でカリスマを発揮してきたチャン・ヒョクの存在感はやはり別格!
一方、その後、反撃のときを静かに待ちながら、密かに準備を整える王の覚悟、初恋相手ユ・ジョンにだけみせる優しい笑顔、そして苦悩など、さまざまな表情でイ・テを表現するイ・ジュンにも引き込まれていく。
そんなイ・テにまっすぐ愛をぶつけるヒロインを体現するカン・ハンナもチャーミングな魅力を放っている。愛に正直で、揺るぎない強さをもつユ・ジョンがイ・テの正体を知った後、どんな選択をするのか目が離せない。
また、王の婚姻ひとつとっても決まり事が多かったこの時代のエッセンスが散りばめられた脚本も見事だ。権力をめぐる王と臣下の命がけの戦い、そして、生きるため、愛する人を守るために、政敵となってしまった男女のロマンスの行方、ぜひとも見届けたい。
■作品情報
『最愛の敵〜王たる宿命~』ディズニープラス「スター」に日本初独占配信中(更新日:毎週月・火)
[2022/全16話]監督:ユ・ヨンウン『契約友情』『ただひとつの愛』/脚本:パク・ピルジュ『一緒に暮らしませんか?』『⻘い鳥の輪舞〈ロンド〉』/出演:イ・ジュン、チャン・ヒョク、カン・ハンナ
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『最愛の敵~王たる宿命〜』© 2022 Disney and its related entities