もう1人、注目したかったのがイ・ジョンウンである。
オムニバス形式のドラマというのは、数々の短いストーリーが個々に独立していることが多くて、相互に関連づけるのが難しいのだが、『私たちのブルース』はすべての話が「串に刺された焼き鳥」のように密接につながっていた。その際に「串」の役割を果たしたのが、イ・ジョンウンが演じた海産店主のウニだった。
彼女自身も、二つのストーリーの主人公となって、チャ・スンウォンと物悲しい初恋物語を演じ、オム・ジョンファと仲たがいする友情物語を繰り広げていたが、その他のすべてのストーリーでも「素晴らしき隣人」となって各エピソードを盛り上げていた。
芸達者な彼女の喜怒哀楽が激しい演技は、まさしく『私たちのブルース』という人生ドラマの最適なまとめ役となった。彼女がいたからこそ、大物脚本家ノ・ヒギョンが紡いだ済州島の人情物語は、うまく収まったとも言える。
それにしても、全編を通してドラマを彩った海の風景は本当に美しかった。済州島を舞台にした映画・ドラマを数多く見てきたが、その中でも『私たちのブルース』は最高傑作だと評価できる作品だった。
●著者韓流エッセイシリーズ最新刊発売!