まずは、是枝監督が大きく心を動かされたというドラマ『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』だ。このドラマで心に闇を抱える哀しきヒロインを演じたイ・ジウンはもちろん、ダメンズ3兄弟の末っ子で元・映画監督ギフン役のソン・セビョクが、ドンスに関わるある役で登場(眼鏡でないので気づきにくいかも?)。『マイ・ディア~』の劇中、ギフンが是枝監督の作品『誰も知らない』を観て感じた思いを語る場面があり、心憎い出演にほくそ笑んでしまう。
同じく『マイ・ディア~』から、主人公の友人で出家した僧侶ギョムドク役のパク・ヘジュンも映画の後半、ブローカー一行に関わる役どころで登場する。大ヒットドラマ『夫婦の世界』で、“国民的不倫夫”の称号を得ている彼だ(『ミセン-未生-』の営業3チーム課長役も、“ワケアリ感”で気になる存在だった)。
是枝監督がハマったという『梨泰院クラス』からは、元チンピラで主人公セロイ(パク・ソジュン)の右腕となっていくスングォンを演じたリュ・ギュンスも出演。『梨泰院~』で名コンビを演じたイ・ジュヨンとは、直接対面はないが、物語の大きな鍵になるキャラクターを担い、わずかな出演シーンながら爪痕を残している。
他にも、『愛の不時着』や『椿の花咲く頃』『恋のスケッチ~応答せよ1988~』など韓ドラ好きにはたまらないキム・ソニョン(映画『三姉妹 - ThreeSisters - 』も日本公開中)。『恋のスケッチ~応答せよ1988~』や映画『エクストリーム・ジョブ』『幼い依頼人』で知られる個性派イ・ドンフィ。映画『はちどり』のキム・セビョク、『39歳』や『ある春の夜に』の“クズ男”役のインパクトも強いイ・ムセンらが次々登場し、物語に没入しつつも、脇の出演者探しが楽しくて仕方ない。
もうひとつ。本作は、撮影のホン・ギョンピョ、衣装のチェ・セヨン、音楽のチョン・ジェイルと、『パラサイト 半地下の家族』チームがメインスタッフとして多く携わっており、冒頭のシーンも『パラサイト~』のラストを思わせるオマージュになっている。ちなみに、チョン・ジェイルは『イカゲーム』の音楽監督としても知られる鬼才だ。
というわけで、役者からスタッフまで、一流どころ総結集という意味でも、観るべし1本だ。
最後の最後に、主観たっぷりに書かせていただければ……、どんなにイケメン俳優が出てきても、年齢を重ね、人生の寂しさや悲しさ、それらを抱えたうえでの温かさを、まろやかかつ繊細ににじませたカン・ドンウォンにはかなわない。
●『ベイビー・ブローカー』全国公開中
監督・脚本・編集:是枝裕和/出演:ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン/製作:CJ ENM/制作:ZIP CINEMA/制作協力:分福/提供:ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro. /配給:ギャガ
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