■顔が似ているといわれるパク・ソダムとの違い

 キム・ゴウンの演技や佇まいはどうだろう。これは歳も同じ(1991年生まれ)でキム・ゴウンと顔がよく似ているといわれるパク・ソダムと比較するとわかりやすい。

 顔が似ているといってもよく見るとだいぶちがう。二人とも朝鮮美人だが、筆者はパク・ソダムのほうが整っていると思う。「cool」とか「冷徹」という言葉はパク・ソダムのほうが似合う。映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)のジェシカ役はそれがぴったりハマった。パク・ソダム扮するジェシカにはイ・ソンギュン率いる富豪の家族を騙すことに躊躇がなかった。だが、キム・ゴウンにジェシカ役は無理がある。顔が整い切っていない分、情や弱さが出てしまいそうだ。あれでは、富豪の家族を騙しきることはできないだろう。

映画『パラサイト 半地下の家族』で、キム・ゴウンによく似ているといわれる女優パク・ソダム扮するジェシカが桃を買ったスーパー(ソウル市麻浦区阿峴洞)

 適度な足りなさは俳優の最大の武器である。筆者が好きな70年代の日本映画によく出ていた大竹しのぶや桃井かおりはその典型だろう。『ユミの細胞たち』の恋愛ベタのユミ役もキム・ゴウンの足りなさがよく生かされている。

 パク・ソダムも魅力的な女優だが、彼女は生涯、顔の似ているキム・ゴウンにあって自分にないものに悩み続けるだろう。

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