ヨンウが毎朝食べる海苔巻きは、一巻き(ハンチュル)を15巻に切り分けたもの。身長160センチ強でやせ型の彼女がひと口で食べているところを見ると、直径は5センチ程度。その断面図はごはん5、具材5くらいの印象だ。最近の海苔巻きはごはんの割合が2から3くらいのものも珍しくないので、ヨンウは意外としっかり食べているのだ。

 具は玉子焼き、ハム、カニかまぼこ、たくわん、にんじん、ごぼう、ほうれん草など。ヘルシーではあるが、もう少しタンパク質を摂ってもよさそうだ。たまにはSPAM(ポークランチョンミート)入りでも食べてほしいが、塩分が多いのでヨンウは嫌うかもしれない。

ヨンウが食べているものとほとんど同じ具材の海苔巻き。釜山の釜田市場で撮影

■海苔巻きと遠足の思い出

 1960年代後半生まれの私にとって、海苔巻きといえば小学校や中学校の遠足のときに持たされる食べものだった。

 1970年代の韓国は朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の経済政策が奏功し始めた時期とはいえ、庶民が学校に持って行く弁当の中身は、ごはん、キムチ、玉子焼きが精々だったので、具の多い海苔巻きはちょっとしたごちそうだった。

 今でも海苔巻きを見ると心が浮き立つのは、そのときの高揚感の名残りかもしれない。

仁川空港のフードコートで食べた今どきの海苔巻き。手前はSPAMをごはんと海苔で巻き、さらに玉子焼きで巻いたもの