■ “半切れ女優” オム・ジウォン、映画『よく知りもしないくせに』で見せた恐しさ

 もう一人の恐怖、オム・ジウォンの印象は、ホン・サンス監督作品『よく知りもしないくせに』(2009年)の映画祭コーディネーター役で決定づけられた。

 ソウルから著名な映画監督(キム・テウ)を地方の映画祭に招いておきながら、長旅で疲れている監督をねぎらいもせず、マイペースでことを運ぶ。監督が映画祭の学生スタッフに愛想を言うと、「心にもないことを言わないで!」とピシャリ。何が不満なのか常に半ギレ状態である。挙句、自身の酒癖に起因するトラブルの責任を監督になすりつける始末。

 筆者も同じ女性として、どんなに虫の居所が悪くても、「人に対してこうはすまい」ということを全部やるキャラクターである。彼女が着ていたボディコンシャスな服の違和感ともに心に刻まれてしまった、韓国映画史に残る恐怖女性だ。

オム・ジウォンの半ギレ演技が堪能できる映画『よく知りもしないで』前半の舞台、堤川国際音楽映画祭の会場

『シスターズ』で3姉妹の母を演じたパク・ジヨンは1話で早々と姿を消したので正直ホッとした。しかし、大物弁護士の妻を演じるオム・ジウォンの活躍はこれからである。第3話では早くもその恐怖女性ぶりを発揮している。

 回を重ねるたびに身構えてしまうドラマだが、怖いもの見たさで4話以降も観ることになりそうだ。

 パク・ジヨンとオム・ジウォン。この2人の恐怖女優の名誉のために書いておく。

 パク・ジヨンはドラマでの豊富な演技経験が買われ、映画デビュー作『優雅な世界』(2007年)でヤクザに扮したソン・ガンホの妻を演じている。ダメな夫に見切りをつけたいが、そうし切れない人情妻の演技はすばらしかった。ジュノ2PM)主演ドラマ『赤い袖先』『油っこいロマンス』などにも出演しているので、顔を知っている人も多いだろう。

 一方、オム・ジウォンは主人公チョン・ウソンの義理の妹のような役を演じた映画『トンケの蒼い空』(2008年)で、純情だが鼻っ柱の強い少女を好演した。このときはのちの恐怖女性が想像できないくらいチャーミングだった。

 2人とも注目すべき演技派だが、『シスターズ』でパク・ジヨン扮する3姉妹の母には、次のように言いたい。

「盗人にも三分の理。もらい物の野菜でキムチを漬けるくらいの母性が残っているなら、フィリピンで反省してドラマのハイライトでは娘たちを助けに来てほしい」