その俳優が出てきただけでゾッとする。この物語はただでは済まないと確信する。そんな俳優がいる。
Netflix配信中の韓国ドラマシスターズ』の場合、第一の恐怖は三姉妹(キム・ゴウンナム・ジヒョンパク・ジフ)の母を演じたパク・ジヨン。第二の恐怖は大物弁護士パク・ジェサン(オム・ギジュン)の妻を演じたオム・ジウォンだ。

 この二人だけでもじゅうぶん怖いのに、5話で姿を現した清蘭会メンバーの生き残り、チャン・サピョン校長に扮した俳優チャン・グァンを見たときはギョっとした。

 チャン・グァン(1952年生まれ)。韓国の映画好きに、「トラウマになっている俳優は?」と問えば、多くの人が彼の名を挙げるだろう。

 ドラマでも『花様年華~君といた季節~』のヒロイン(イ・ボヨン)の父親役をはじめ、『王になった男』『雲が描いた月明り』など、様々な作品に脇役で出演している。

■チャン・グァンのトラウマ演技〈1〉映画『トガニ 幼き瞳の告発』の校長役

『トガニ 幼き瞳の告発』(2011年/ファン・ドンヒョク監督)は、地方の視聴覚障害者学校で起きた事件をめぐって、被疑者と追及者(コン・ユチョン・ユミ)が法廷で争う物語だ。

 チャン・グァンが扮したのはその被疑者で、視聴覚障害者学校の校長。子供たちに対し、ここに書くのもおぞましい蛮行を働く輩だ。チャン・グァンの顔を見れば、誰もが劇中の校長の醜さを思い出すのでは? それほど凶悪なキャラクターだった。ある意味、誰もが敬遠しそうなこの役をよく引き受けたと逆に称賛したいほどだ。すばらしい役者根性である。当時、チャン・グァンは60歳で、好々爺でも演じていれば安泰なのにと、多くの人が思っただろう。

 その勇気が評価されたのかどうかはわからないが、翌2012年は5本の映画に、翌々2013年には7本もの映画に出演している。

映画『トガニ 幼き瞳の告発』の物語は、悲しいことに、全羅南道・光州(写真)で実際に起きた事件が元になっている