■チャン・グァンのトラウマ演技〈2〉映画『26年』のチョン・ドゥファン(全斗煥)元大統領役

 功と罪が話題になりやすいパク・チョンヒ(朴正煕)大統領と違い、1996年の逮捕後、罪を問われたまま2021年にこの世を去ったチョン・ドゥファン(全斗煥)元大統領。映画『26年』(2011年)でチャン・グァンが演じた「クサラム(その人)」は実名こそ出ないが、1980年の光州民主化運動の過剰鎮圧の元凶として描かれており、モデルがチョン・ドゥファンなのは明らかだ。韓国史上もっともわかりやすい悪のキャラクターは、ドラマ『第五共和国』のイ・ドックァをはじめ多くの俳優によって演じられてきた。

『26年』は、多くの犠牲者を出した光州民主化運動過剰鎮圧から26年間、復讐の機をうかがっていた犠牲者2世たちが事を起こす話で、彼らの綿密な復讐計画の網の目をくぐろうとする元大統領を、チョン・グァンが憎らしいほど巧みに演じている。この映画と昨年の現実のチョン・ドゥファンの最後をつなげて観ると、感慨深いものがある。

■チャン・グァンの口直し演技、映画『怪しい彼女』の写真館のおじさん役

『トガニ 幼き瞳の告発』『26年』『シスターズ』を観ると、確実にチャン・グァン嫌いになりそうだが、彼の名誉のために別の顔を見せてくれる映画をお教えしよう。

 遺影を撮ろうと写真館にふらっと入ったのをきっかけに20歳に若返った毒舌ハルモニ(ナ・ムニ)をシム・ウンギョンが演じた『怪しい彼女』(2013年)だ。

 チャン・グァンが演じたのはまさにその写真館の主人。

「50歳は若く見えるように撮りますよ。さぁ、ハナ~トゥル~セッ」

 この魔法のような言葉から不思議で痛快な物語が始まる。 

 声優経験もある美声とともにチャン・グァンの別の魅力を味わってもらいたい。

写真館の主人の役というと、誰もがハン・ソッキュの『八月のクリスマス』を思い出すだろうが、『怪しい彼女』のチャン・グァンも温かみがあっていいキャラクターだった。写真は全羅北道群山にある『八月のクリスマス』の写真館のセットの前で記念撮影する家族連れ

『シスターズ』10話の終わりに流れた11話の予告編では、チャン・グァン扮するチャン・サピョン校長が、再び姿を見せていた。物語もいよいよ大詰め。情蘭会のラスボス感を匂わせるこの場面は、トラウマ俳優の怪演を期待させるにじゅうぶんだ。