俳優の実力と存在感をもっとも明確にするものが、時代劇だ。スター性だけではすまされない。韓服を凛と着こなし、時代劇特有の言葉遣いを優雅に操り、堂に入った品のある所作で魅せる。若手俳優が名実ともにトップ俳優になれるか否かは、時代劇を演じられるか否かにかかっている。
ジュノは『赤い袖先』で見事にこの条件をクリア。朝鮮の王になる者の圧倒的威厳を身体中から発し、人を寄せ付けない雰囲気さえあった。
しかも、本作では、“青年イ・サンの恋”に焦点が当てられ、そのロマンチックな面がダダ漏れ。ツンとデレが絶妙なさじ加減で行き来し、ジュノのロマンス演技の虜になってしまう。
一方で、悲劇の死を遂げた父のことでトラウマを抱え、自分が父のようになるまいと常に気を張り詰めて生きている。王位継承者としての孤独と重み、そして、ただひとり自身の心の緊張を解きほぐしてくれるヒロイン、ドギム(イ・セヨン)への強い想い。「王」と「ひとりの男」、2つの感情が渦巻き、見る者の心を揺さぶる史劇の名キャラクターが、ここに生まれたのだ。
もうひとつ、ロマンスは皆無だが、『赤い袖先』の前作となる主演作『自白』も、俳優ジュノのストイックな魅力がにじみ出た名作だ。
心臓病で幼少期の大半を病院で過ごし線は細い印象だが、芯は強く意思も固い敏腕弁護士チェ・ドヒョンというキャラクターは、イ・サンの土台になっているともいえる。ぜひチェックしてみてほしい。