『検事プリンセス』で演技デビューした彼は、続く『シークレット・ガーデン』(2010年)では生意気だが天才的音楽の才能をもつシンガーソングライター、サン役に。実は、最初の候補俳優が不発に終わったため、急遽代役として登板したジョンソクだったが、自分のことは多くを語らず何を考えているかわからない神秘性で注目を集め、ヒョンビンら圧倒的魅力をもつ主演俳優たちのなかにいても気になる存在として確かな印象を残した。

 このサン役の好演により、ジョンソクは人気シリーズ『恋の一撃 ハイキック』(2011~2012年)への出演を掴む。チョン・イルユン・シユンというスターを輩出したこのシリーズで彼が演じたのは、単純でわかりやすい悪ガキ高校生。同じ生意気でも、前作のサンが“陰”だったとすれば、真逆の“陽”のキャラクター。コミカルでテンポのいい演技を生き生きと見せ、お茶の間に顔を知らしめた。

 その後、若手スターの登竜門といわれる「学校」シリーズの2013年版、『ゆれながら咲く花』(2012~2013年)でメインキャラクターに抜擢。様々な問題を抱える高校生たちの友情と成長痛を描いたこのドラマで、ジョンソクが演じたのは、孤独でワケアリの高校生コ・ナムスン。10代特有の痛みや危うさ、儚さを、瑞々しい感性と“静けさの演技”で魅せ、ティーンを中心に爆発的人気を得たと同時に、その繊細な演技力で業界から注目を集めることになった。

 続く『君の声が聞こえる』(2013年)では、9歳年上の初恋の人を想う高校生パク・スハを演じ、大ブレイク。3作連続での高校生役だったが、本作では繊細さや瑞々しさはそのままに、“年下らしくない大人っぽさ”を魅せることに成功し、世の女性たちの心を鷲掴みにした。特に、年上のヒロインを細かに(態度はそっけなく)気遣い、しっかりとリードし守り抜く姿は、低く響く声の魅力も相まって、どきりとするほどセクシーだった。

 ちなみに、このドラマではテコンドーをするシーンもあったが、イ・ジョンソク自身、幼い頃に父親のすすめでテコンドーを習い、公認4段の有段者。テコンドー選手を夢見ていたが、中学の時の交通事故により十字靭帯を切る負傷を負い、挫折したという過去もある。

 さらに、前述の『ドクター異邦人』では、飄々とした天才外科医パク・フンに変身。これまでの感情を抑えた役とは異なり、怒りや悲しみ、喜びなど感情を大きく揺らす人物で、コミカルな演技とシリアスな演技を柔軟に行き来しながら、デキる男のカッコよさを体現した。