■映画『別れる決心』の見どころ、主演パク・ヘイルの独特な存在感
映画『別れる決心』のストーリーを見てみよう。
刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、崖から転落死した男の妻ソレ(タン・ウェイ)のことを怪しいとにらんで調査を開始した。ところが、疑惑が深まる度に、ヘジュンは魅惑的な彼女に強く惹かれていってしまう。同じくソレもまた、ヘジュンに対して特別な感情を見せていく。こうなると男女は冷静ではいられなくなる。
一転して、急に捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは新たな疑惑が渦巻く“愛の迷路”のはじまりでもあった……。
こういう展開で物語は思わぬ方向に進んでいく。官能的な映像美で貫かれたパク・チャヌク監督のスタイルがよく生きており、巧みに練られた脚本と名優二人の演技がとてもいい。
私が特に注目したいのがパク・ヘイルの独特な存在感だ。
今や韓国映画を代表するトップ俳優の1人だが、彼にソウルでインタビューしたのは2004年5月のことであった。
会ったときに真っ先に思ったのは「知性的な雰囲気を持っていてカッコいい!」ということだった。まさに「知性の貴公子」と呼べる俳優だ。しかも、話を聞いてみると、言葉の端々に深い探求心があり、確かな人生観に裏付けられた生き方をしていることもよくわかる。
当時はポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』で容疑者の役を演じて絶賛されていた。彼は演劇界で下積みが長かったが、当時のことをこう語っていた。
「下積みのときに学んだことは、理論的な勉強より、人が生きていく姿そのものですね。
映画というジャンルは人の生きざまを素材にしますが、演劇界の人間的な匂いがする生き方に触れたことが大いに役立ったと思います。映画はどうしても商業的なシステムで動くものですが、その前に演劇という純粋な活動をしたのが滋養分になりましたね」(パク・ヘイル)