「プロファイリング」という概念が浸透していなかった1990年代後半を背景に、韓国初のプロファイラーとして道を切り開いた男の奮闘を描いたサスペンスの傑作『悪の心を読む者たち』。

 犯罪者の心理を読み解き、犯人逮捕に挑んでいく主人公ソ・ハヨンの苦悩と静かな情熱を、抑制のきいた演技で魅せたキム・ナムギルは、2022年のSBS演技大賞で大賞を受賞した。このときのキム・ナムギルの受賞スピーチが、非常に印象深いものだった。

 まず、その受賞スピーチを紹介するとともに、キム・ナムギルの本作への思いを語ったインタビューをお届けする。(インタビュー全2回掲載のうち前編)

★キム・ナムギルProfile

 1980年3月13日生まれ。184cm。1999年、若手俳優の登竜門とされた学園ドラマシリーズ、『学校』でデビュー。イ・ハンという芸名で活動後、2008年の映画『カン・チョルジョン 公共の敵1:1』出演を機に本名キム・ナムギルで再スタート。2009年の大ヒット時代劇『善徳女王』のピダム役でブレイク。続く『赤と黒』では主演に抜擢、タフでセクシーな“危険な男”の魅力で多くの女性たちを虜にした。

 代表作に『医心伝心〜脈あり!恋あり?』(2017年)、『熱血司祭』(2019年)、映画『感染家族』(2019年)、『非情宣言』(2022年)など。最新ドラマ『アイランド』がPrime Videoで配信中。Netflixオリジナル作品『剣の詩』が2023年第3四半期(7月〜9月)配信予定。

■キム・ナムギル主演、SBS演技大賞受賞作『悪の心を読む者たち』スペシャルインタビュー

《みんなで一緒に作り上げた作品が認められたようで、どんな時よりもうれしかったです。『悪の心を読む者たち』はいつも以上にありがたく思っている方が多い作品です。2022年1月に放送したドラマを年末まで忘れず愛してくださった全員の方に感謝しています。

“被害者とその家族だけを考えよう”と思う心で作品に臨みました。いつも本質的な悩みを抱かせてくれるパク・ボラム監督、原作があるにも関わらずそれが思い出せないくらい素晴らしい文章を書いてくれたソル・イナ作家、およびすべての俳優とスタッフたちに感謝を申し上げたいです。

 そして『悪の心を読む者たち』が完成できたのは、凶悪犯たちを演じてくれた俳優たちの努力があったからこそだと思っています。悪役を演じるのは簡単なことではないですが、俳優という名の下にためらうことなく、最高の演技を見せてくれた俳優たちに感謝しています。彼らを見ながら、『演技は有名税でするものではない」『韓国には良い俳優たちが本当に多いんだな」と感じましたし、「いつも謙遜しなければならない」と思いました。

 また、以前の事件たちがトラウマとして残り、おつらいと思いますが、完成度が高い作品のために現場でたくさんの助言をくださったクォン・イルヨン教授、韓国にも科学捜査が必ず必要だと訴え、科学捜査隊を作る動力となったユン・ウェチュルさん、お二人が歩んできた道に深い感謝と心から尊敬を表します。

 最後に僕たちの生命と安全のために昼夜問わず尽力してくださる警察の方々と、見えないところで悪の心を読むために努力してくださっている全国のプロファイラーの方にこの賞を捧げます》――キム・ナムギル、2022年SBS演技大賞・大賞受賞スピーチより 

『悪の心を読む者たち』©SBS