2つ目は、フィリピンを舞台にしていること、ではないか。物語がじわりと本質に迫っていくシーズン2からは、舞台はほぼフィリピンとなる。東南アジアならではの雑多で猥雑で湿り気のある雰囲気が、ただならぬ印象をもたらし、“カジノ”の世界観を引き立てている。
マニラ以外は架空の町だが、これだけ大がかりにフィリピンでロケをした韓国ドラマはおそらく初だろう。劇中に登場する警察やレストランなども何だか雰囲気たっぷりだが、現地の賄賂社会や犯罪の描かれ方もあまりにリアルで、フィリピン政府からクレームがこないんだろうか……と、ヒヤヒヤするほどだった。
そして3つ目は、何といっても俳優陣の演技である。主演のチェ・ミンシク、ソン・ソック、イ・ドンフィをはじめ、今見たい実力派俳優を揃え、見せ場もたっぷり用意している。特に個人的に見ていて心が踊ったのは、俳優の演技対決シーンだ。
なかでも注目して見ていたのは、チェ・ミンシク×イ・ドンフィ。2人のシーンはたくさん設けられているが、序盤に登場する車中で2人が軽快な音楽にのってはしゃぐ場面が絶品だ。2人の年齢差を越えた絶妙な掛け合いが光る、軽薄さとクールさを併せ持った名シーンになっている。物語が進むにつれ、さまざまに変化する2人の関係の原点になっているようにも見える。
イ・ドンフィは、ソン・ソックとの競演も見逃せない。この2人のシーンは逆にとても少ないが、2人でカジノのバーに座って話す場面にはゾクゾクさせられた。アラフォー世代の韓国俳優の中でも、特に個性と演技力と人気を備える2人。そんな彼らがガチンコでやり合うシーンは、いや、もうたまらない。
ちなみに、ソン・ソックは、『私の解放日誌』のク氏とはまったく違う実直な刑事役。アメリカやカナダで暮らした経験もあり、アメリカドラマ『Sense8 センス8』でも刑事役を演じていたが、フィリピン俳優のニコ・アントニオとのシーンでは、その巧みな英語力にも驚くはず。