元軍人とテロリストとの鬼気迫る戦いを描くサウンドパニックアクション映画『デシベル』。ドラマ『ファースト・レスポンダーズ 緊急出動チーム』で演じた破天荒な熱血刑事ぶりも記憶に新しいキム・レウォンが爆弾テロに立ち向かう元海軍副長に、少女マンガから抜け出したようなルックスを駆使したロマンチックな役柄で不動の人気を誇るイ・ジョンソクが謎の高IQテロリスト役に挑んだ。
その圧倒的な緊張感、俳優たちがノースタントで挑んだアクションの数々、迫力の映像に存在感を発揮した「音」に関する設定、そして、明らかになる真実と悲劇――。 独特のスタイリッシュさとヒューマンをあわせもつ韓国映画『デシベル』を生み出したファン・イノ監督に話を訊いた。〈記事全2回のうち前編〉
■映画『デシベル』ファン・イノ監督インタビュー〈前編〉
キム・レウォン演じる元軍人と、イ・ジョンソク扮する頭脳派テロリストの戦いを描くサウンドパニックアクションムービー
“デシベル”音の大きさを伝えるこの単位が映画のタイトルになったのは、今回使われた爆弾が音に反応して起爆することに由来する。歓声、子どもの遊ぶ声、食事どきの台所から聞こえる機器の音、日常生活にあふれるあらゆる音が危険を生み出すのである。
――本作のアイデアはどこから生まれてきたのでしょうか。
「最初、爆発テロの作品を作ってみないかとオファーされたのですが、一般的な爆弾テロだけでは物足りない。そこで考えたのが、こちらが規制できない、制御や解体のできない爆弾はないかということでした。そうして生まれたのが“音に反応する爆弾”のアイデアです。次にヴィラン(悪役)のキャラクター作りです。
なぜその人物は、“規制できない”爆弾を作ったのか。規制してはいけないことを誰かが規制した結果、生まれた出来事があったはずだ、と。そうやってアイデアを膨らませていくなかで、男たちがある抜け出せないジレンマに陥る状況として、潜水艦という特殊な環境を思いつきました。そこである悲劇的なことが起こり、それを克服しようとする主人公がなんらかの選択をする。その選択によって生まれるある出来事からくる痛みが怒りや復讐を生んでいく。そんなふうに、物語が生まれていきました」
――なるほど、仕掛ける側の視点が最初にあったんですね!作品を拝見して、一方ではなく両方に心が動きましたし、胸が痛みました。
「韓国には『一線を超える』という表現がありますが、自分の立場からすると限度が過ぎる、線を超えた段階で応戦が始まるんです。この作品でイ・ジョンソクさんが演じたテロリストからすると、キム・レウォンさん扮するカン・ドヨンという人物は“一線を超えてきた”状態、応戦しなければいけない、懲らしめなければいけないと思うわけです。だからこそ、執拗にカン・ドヨンに迫っていく。この物語は、一線を超えたふたりに生まれた“悲劇”が描かれています」