■9位『別れる決心』(2022年)/パク・ヘイルタン・ウェイの距離感と韓国沿岸部の風光が見もの

 パク・チャヌク監督らしいおどろおどろしい作風が『お嬢さん』で一段落し、新境地を開拓したといわれる作品。

 パク・ヘイル扮するナイーブな刑事と香港の女優タン・ウェイ扮するミステリアスな容疑者の微妙な距離感が本作の見せ場だが、韓国の田舎町の風景も見ものだ。

 撮影地慶尚南道釜山、機張、馬山、南海全羅南道順天、宝城。忠清南道の泰安。江原道三陟、旌善、束草など広範囲に渡っている。

■10位『豚が井戸に落ちた日』(1996年)/ソン・ガンホの映画デビュー作にしてホン・サンスの監督デビュー作

 ここ数年のホン・サンス監督の水墨画のような映像世界とはかなり趣の違う作品。次作の『カンウォンドのチカラ』ともまた違った作風だ。

 主演は『ソウルの春』『模範タクシー』『ミスター・サンシャイン』『新感染 ファナル・エクスプレス』のキム・ウィソン。最近は喜怒哀楽のはっきりした役柄が多いが、本作では鬱々とした小説家を演じている。

『豚が井戸に落ちた日』はじつはソン・ガンホの映画デビュー作でもある。出番は多いとは言えないが、1990年代風のスタイリッシュな作家という彼らしからぬ役柄だ。ソン・ガンホはこの翌年、イ・チャンドン監督の『グリーン・フィッシュ』のリアルなチンピラ役で脚光を浴びる。その2年後、『反則王』で主役を張り、2000年に『JSA』、2003年に『殺人の追憶』に出演。スター街道を歩むことになる。

 小説家とその彼女と三角関係にある映画館職員役は、『コンクリート・ユートピア』でアパートの209号室住民に扮したソン・ミンソク。彼も1990年代から30作近い映画に出ているバイプレイヤーだ。

 これらの作品は、韓国映像資料院のYouTubeで公開年順に順次アップロードされる予定だ。