■キム・パンホ(チョ・ジヌン)の情婦役、キム・ヘウン(1973年生まれ)
チョ・ジヌン扮するヤクザ、キム・パンホの情婦で、ナイトクラブを牛耳る世渡り上手なマネージャーを演じたのはキム・ヘウンだ。経営権をよこせとばかりに乗り込んできたイクヒョン(チェ・ミンシク)とつかみ合いのケンカをするシーンはインパクト絶大。しかし、いざ実権が移ると、猫なで声でイクヒョンに擦り寄るシーンは、「まったく、人間って奴は……」と思わせる名演技だった。
この女優の私生活もさぞやと妄想してしまうくらいの怪演だったが、じつはソウル大卒でMBCアナウンサー出身である。
その後はドラマでも活躍し、近年では、『梨泰院クラス』のライバル飲食チェーンの女性専務役、『二十五、二十一』の高校フェンシング部コーチ役など、数多くの作品にバイプレイヤーとして出演している。
■密輸商役、イ・ユニ(1960年生まれ)
映画の冒頭、イクヒョン(チェ・ミンシク)がただの税関職員ではないことを匂わせる場面に登場した密輸商役の俳優イ・ユニ。彼の1分足らずの演技にも目を奪われた。密輸が発覚すると、イクヒョンの上司が自分の親戚であることを持ち出し、財布から現金を出す。それをこっそり受け取るイクヒョン。このときの密輸商の嫌らしい笑顔がいい意味で醜悪だった。これで一杯やってくれとばかりに、杯を乾すように手首を動かす仕草も味がある。
イ・ユニはじつは本作の4年前、イ・チャンドン監督の『シークレット・サンシャイン』に出演している。傷心の主人公(チョン・ドヨン)に教会通いを勧めた薬局の奥さんの夫役である。映画の前半では善人そのものに見えるが、後半では不潔どころではない醜悪な姿をさらす。いくら役がほしくてもなかなか引き受け手がいなさそうな役柄であり、しかも、難しい役だ。
以来、彼に注目していたのだが、『ザ・メイヤー 特別市民』(2017年)では、現市長(チェ・ミンシク)に戦いを挑む市長候補役を演じた。他にも、リュ・スンリョン主演『7番房の奇跡』の検事役、チョ・インソン主演『ザ・キング』の男性ムーダン役、ハン・ソッキュ主演『悪の偶像』の道知事代行など、守備範囲は広い。近年では『コンビニのセッピョル』『ソンサン─弔いの丘─』など、ドラマの脇役でも活躍している。