「名優製造所」とでも呼びたくなる作品がある。ミュージカルなら、ファン・ジョンミンソル・ギョングチョ・スンウイ・ジョンウンキム・ヨジンアン・ネサンなどを輩出した『地下鉄一号線』。そして、映画なら2012年公開のクライムエンターテイメント『悪いやつら』(ユン・ジョンビン監督)はその筆頭だ。

 チェ・ミンシク扮する主人公イクヒョン(税関職員くずれのにわかヤクザ)とハ・ジョンウ扮するヒョンベ(筋金入りのヤクザ)の愛憎劇で助演を務め、本作をきっかけに売れっ子になっていった俳優たちにフォーカスする。(記事全2回のうちの後編)

■ 主人公(チェ・ミンシク)の義弟役、マ・ドンソク(1971年生まれ)

 劇場で理屈抜きに楽しめる映画の主役として、今やファン・ジョンミンやソン・ガンホに迫る人気と観客動員力を誇る“マブリー”ことマ・ドンソク。

『悪いやつら』では、チェ・ミンシク扮するイクヒョンにテコンドー七段の腕前を買われて犯罪組織の道に入ったが、その世界に染まりきれない義弟を演じている。撮影当時は40歳で、身体の大きさも迫力も今の6分といったところ。路上のケンカに慣れているヤクザに対して非実戦的なテコンドーの型を見せるシーンは失笑ものだが、そこはマブリー、どこかかわいらしさがある。

 今は『犯罪都市』シリーズに象徴される怪力無双キャラが定着しているが、ところどころで小市民的な人間味を見せてくれる。この映画はその萌芽といえる作品だ。

 マ・ドンソクは本作以降、出演作が急増し、2016年には『新感染 ファイナル・エクスプレス』の怪力無双役で大ブレイク。スター街道をばく進する。

『犯罪都市』シリーズは、最新作『犯罪都市 PUNISHMENT』で韓国の累計観客動員4000万人を突破。マ・ドンソク扮するマ・ソクト刑事がIT犯罪組織と対決する同作は9月27日(土)より日本公開予定だ。

『悪いやつら』で主人公(チェ・ミンシク)の義兄(マ・ドンソク)が歩いたヒンヨウル文化村の海沿いの道

■主人公の息子役、パク・ビョンウン(1977年生まれ)

 税関職員くずれのヤクザ、イクヒョン(チェ・ミンシク)は、裏社会を歩きながらも息子の教育には熱心だった。その息子が成長し、ソウルで検事になった姿を演じたのがパク・ビョンウンだ。

 父親のイクヒョンは自身が法曹界のエリートたちにさんざん圧迫されたため、身内を検事にしたいという野心があった。その完成品である人間味の感じられない若い検事役に、ミステリアスな演技が持ち味のパク・ビョンウンはみごとにハマった。

 近年は、『キングダム』シリーズや『ムービング』『ソンサン─弔いの丘』など、ドラマでも活躍している。また、年内に日本公開が決まっているラ・ミラン主演映画『市民ドクヒ』にも刑事役で出演している。