1970年代の韓国の漁村を舞台に、海女たちが再起をかけた大勝負に出る海洋クライムアクション『密輸 1970』。『シュルプ』のキム・ヘスと『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』のヨム・ジョンアという、韓国屈指のカリスマ女優が海女役でW主演。『ムービング』で大人の魅力を放ったチョ・インソンがベトナム戦争帰りの密輸王を熱演する。韓国では、大鐘映画祭監督賞や青龍映画賞最優秀作品賞などを受賞し、大ヒットを記録した。

 一攫千金を求めて、海女、密輸王、チンピラ、税関が闘いを繰り広げる本作。アーティスティックスイミングのコーチの助けを借り3カ月前から特訓したという海中シーンなど、アクションも見応えたっぷりだ。夏にぴったりな爽快&痛快なアクション大作を生み出したリュ・スンワン監督に話を訊いた。

■「水中なら、女性たちが男性相手にでも同等に闘えると思った」
リュ・スンワン監督が水中アクションに挑んだ理由              

――リュ・スンワン監督の作品といえば、拳のアクションや激しいカーチェイスが印象的ですが、今回初めて水中アクションに挑戦された理由は?

「主人公の女性たちが暴力的な男性たちとの闘いにおいて、肉体的な対決になったとき、水の中であれば“同等の闘いができる”と思ったからです。

 また、重力が作用する地上とは違って、さまざまな動きを見せられることも、私にとっては魅力でした。マーベルのスーパーヒーロー映画や架空のファンタジー映画でもなければ、重力に反するアクションなんて不可能ですよね。でも、水の中ならば、それが可能だったんです」

――海女が主人公の韓国映画は珍しいと思います。

「海女というのは、ある意味、超能力者です。彼女たちの肺活量、素潜り能力は、一般人とはまったくレベルが違うんです。水の中で特別な装備もなく、あのようなアクションを見せることができるのは、映画監督の私から見ても新鮮でした。

 一方で、いくら海女たちの肺活量がずば抜けているといっても、水中に滞在できるのは2~3分が限度。その制約ある時間の中で目的を果たさなければならないため、“時間制限のあるサスペンス”を描けるという点もポイントでした。

 また、この映画を準備しながら、海の中がこれほどまでに危険であるということを初めて知りました。劇中でもわかるように、さまざまな怪我をする危険が張り巡らされていますし、人間が未だに知らない生命体がいる可能性もあります。環境や空間が海女たちを絶えず脅かしている。これ以上に魅力的な映画の設定はないですよね」

――水中アクションで、気に入ってるシーンを教えてください。

「海中でチュンジャ(キム・ヘス)とジンスク(ヨム・ジョンア)がそれぞれ手を伸ばし、お互いの手を触れたあと上下にすれ違っていくシーンがありますが、これは初期の段階から絶対に撮りたい思っていました。当初は、ハイタッチをするだけの設定でしたが、水中スタントチームと訓練していく中で、お互いの手を取り合って上下に交代することも可能だとわかり、あのシーンが生まれました」

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